「Creating α」は、
様々なファクターで「平均を上回る」こと

 冒頭の図表の45度の線は、斜め線の右上に向かってリスクが高まれば、それだけリターンも高まることを示している。逆も同じで、斜め線の左下に行ってリスクが低くなれば、それだけリターンも低くなるというものだ。

 この太く描かれた45度の均衡線、これを右上の領域に行きつつ、かつリスクを低減しながらリターンを高くすることが出来れば最高だ。

 しかし、そんな物理法則を打ち破るようなことができるのだろうか?

 このように45度の均衡線(境界線)の上半分の領域を見出すことを金融用語で「Creating α」という。プラスアルファを創造するために、不動産投資をクリエイティブに考えるということだ。

 すぐれた不動産投資家と起業家を長年輩出してきたハーバード大学デザイン大学院(GSD)のフランク・アペシェッセ教授は、自身も、このCreating α領域で淡々と投資を実行してきたからこそ、現在の成功があると授業で語っている。

「Creating α」は、平たく言うと、様々なファクターで「平均を上回る」ことだ。

 想像してみて欲しい。どんなアイデアだと平均を上回ることができるのだろうか?

 例えば、リターン(利益)を増やすためには、平均よりも有利な金利や長い返済期間で融資を受けられればローン後キャッシュフローを増やせる。

 実質収益(NOI)を平均よりも高くするために、空室率を減らしたり、建物維持や賃貸管理にかかる経費を見直してみる。新築開発なら、画一的で平凡なワンルームを計画するよりも、デザイン性の高い、貸し床面積の広い、素敵な住空間を計画する。

 売却時期はどうだろう? どんな時期でも平均的な売却評価額よりも高い価格で買いたがる買い手を引き付けられるだろうか? 好景気時はもちろんだが、リーマンショックやコロナショック時においても同様だ。

 では、これらの平均値を上回る戦略は、次の投資でも同じように再現してアルファをクリエイトできるだろうか?

上田真路(うえた・まさみち)
建築家・不動産投資家
KUROFUNE Design Holdings Inc. 代表取締役CEO
ハーバード大学デザイン大学院で不動産投資と建築デザインを学び、投資理論とデザインの力を融合させたユニークな不動産投資を行う。
鹿島建設入社4年目に不動産投資を開始。数々の不動産投資セミナーに足を運び、不動産関連書籍を数十冊読破。そんな中で出会ったメガ大家集団をメンターに持ち、指導を仰ぎながら不動産投資をスタートする。最初に行った東京・神楽坂での新築マンション開発では超狭小地に苦労し、辛酸を舐めつつも独自の不動産投資スタイルを確立する。現在5棟の超優良物件を保有。保有物件の中では投資額が4年間のうちに26倍になったものもある。
1982年高知県生まれ。早稲田大学理工学部建築学科、同大学院卒業後に鹿島建設入社。
大学院卒業時にリゾートホテル開発プロジェクトにより早稲田大学小野梓芸術賞を受賞。
同社では国内外で建築設計や大規模な都市開発業務に従事。鹿島建設社長賞、グッドデザイン賞、SDレビュー賞などを受賞。2016年、ハーバード大学デザイン大学院(GSD)へフルブライト留学。2018年、GSD不動産デザイン学科を卒業、外資系不動産ファンドでの投資業務を経験した後、KUROFUNE Design Holdings Inc.(デザイン事務所兼不動産ファンド会社)を創業し独立。現在はハーバード学生寮生活で得た原体験をもとに、住まいと学びを融合させた国際学生寮「U Share」を開発運営する。また、慶應義塾大学SFC特任講師、早稲田大学特任講師として「不動産デザイン」について教えている。初の著書に『ハーバード式不動産投資術 資産26倍を可能にする世界最高峰のノウハウ』(ダイヤモンド社)がある。