地政学が一大ブームだが、そのベースとして必要なのは「世界地図を読む力」、すなわち各国の文化や歴史背景、政治経済や社会情勢に関する深い地理的知識に他ならない。本連載では、話題の新刊書『おもしろ雑学 世界地図のすごい読み方』からの抜粋で、日本人があまり知らない世界各地の意外な実情をわかりやすく紹介する。今回は、世界各所に存在する「海外領土」がテーマ。
海峡で有名なジブラルタルは
イギリス領土で公用語も英語
スペインやポルトガルがあるイベリア半島の南端に、ジブラルタルという都市がある。面積約7平方キロ、人口約3万人の小さな都市で、ジブラルタル海峡に突き出た岬に位置している。
このジブラルタル、地図を見る限りではスペインの領土に思えるが、そうではない。遠く離れたイギリスの領土なのだ。
イギリスがジブラルタルを領有することになったきっかけは、いまから300年以上前に起こったスペイン王位継承戦争にある。スペインは16世紀に世界の覇権を握ったが、1588年に自慢の無敵艦隊がイギリス海軍に敗れると、徐々に衰退。1704年には王位継承戦争で混乱したスキを突かれ、イギリスにジブラルタルを占拠されてしまう。そして1713年のユトレヒト条約により、ジブラルタルの統治権はイギリスのものとなったのである。
それ以降、ジブラルタルには多くのイギリス人が移住してきて、公用語も英語になった。現在もイギリスの支配下に置かれており、町には「ウィンストン・チャーチル・アベニュー」や「ジョン・マッキントッシュ広場」といったイギリス風の地名が並んでいる。