国軍クーデターが起きたミャンマーは国内で連日、大規模な抗議デモが行われ、軍の治安部隊と衝突するなど緊迫した状況が続いている。米国が国軍幹部らの在米資産没収を決めたが、今後、国際社会の制裁の動きなどが広がれば世界の新たな不安定要因になる。とりわけ南シナ海への海洋進出や「一帯一路」構想など、軍事・経済両面でミャンマーやASEANへの関与を強めてきた中国の出方によっては、米中対立激化やアジア緊迫の火種となりかねない。「軍政回帰」は本物なのか、中国は今後、どう出るのか――。クーデターをめぐる地政学をミャンマー、中国両国の大使を務めた宮本雄二氏(宮本アジア研究所代表)に聞いた。(ダイヤモンド編集部特任編集委員 西井泰之)

国軍、NLDの勢いに危機感
だが「軍政回帰」は疑問

――今回の国軍のクーデターをどう受け止ますか。

宮本雄二
宮本雄二(みやもと・ゆうじ)/京都大卒、1969年外務省入省、軍縮課長、外相秘書官、中国課長、アトランタ総領事等を経て2002年から04年までミャンマー大使、沖縄担当大使を経て06年から中国大使。10年に退官し日中友好会館会長代行などを歴任。『これから、中国とどう付き合うか』『激変ミャンマーを読み解く』『習近平の中国』『日中の失敗の本質』など著書多数。1946年生まれ。福岡県出身。 写真提供:宮本アジア研究所

 2011年に民政移管後、15年と昨年11月の2回の選挙でアウンサンスーチー氏が率いる国民民主連盟(NLD)が大勝し、国軍側に影響力がどんどん弱まる危機感が強かった。

 国軍側は憲法で国会に議員数の4分の1の「軍人枠」を設け、民政移管後も影響力を維持する仕掛けを施してきたが、それでもNLDが勢い増す一方のなかで焦りがあったことは確かだろう。

 ただ歴史的に見ても、独立した当初からミャンマー(当時はビルマ)は民主主義体制を志向してきた。国軍が権力を掌握した時もあったが、派閥争いや汚職で民政が機能しなくなったときに暫定的に統治するというものだ。その意識は国軍自身も今も持っているはずだ。それが他国の軍事政権とは違う点で、国民もそういうことで軍事政権を認めてきた。

 だから今回も軍政回帰に一直線に向かうとは思えない。