おもしろ雑学 世界地図のすごい読み方Photo:PIXTA

地政学が一大ブームだが、そのベースとして必要なのは「世界地図を読む力」、すなわち各国の文化や歴史背景、政治経済や社会情勢に関する深い地理的知識に他ならない。本連載では、話題の新刊書『おもしろ雑学 世界地図のすごい読み方』からの抜粋で、日本人があまり知らない世界各地の意外な実情をわかりやすく紹介する。

世界4位の広大な国土だが
中国の標準時はひとつだけ

 日本には時差がない。世界では経度が15度違うごとに1時間の時差が設定されているが、日本では経度がほぼ15度の幅に収まっているため、北海道から沖縄に至るまで標準時はひとつしか用いていない。

 一方、国土面積約1710万平方キロで世界一を誇り、ヨーロッパからシベリアまで東西に広がるロシアでは、なんと10時間もの時差があり、11の時間帯に分けている。国土面積983万平方キロで世界3位のアメリカも同様で、本土だけで4つ、アラスカとハワイを含めると6つの時間帯がある。

 このように、小さな国では標準時はひとつしかなくても、広大な国土をもつ国では複数の時差を設けるのが一般的だ。しかし、中国は例外である。

 中国の国土面積は約960万平方キロで世界4位。最西端の新疆ウイグル自治区から最東端の黒龍江省までの距離は約5200キロ、経度差は約60度もあるが、時差を設けず、すべての地域でたったひとつの標準時を使っているのである。

 実は中華民国時代(1912~1949年)には、5つの標準時があった。しかし中華人民共和国(現在の中国)が成立すると4つが廃止され、現在の標準時に一本化された。

 中国唯一の標準時は首都北京にも近い東経120度の子午線を基準にしたもので、北京時間と呼ばれている。北京は国土の中央部ではなく、かなり東に寄っている。しかし、首都の時間が国の全域で使われていれば行政のすべてにおいて都合がよいから北京時間で統一したのだ。

 北京付近の住民は北京時間だけで何の問題もないだろう。しかし北京から遠ざかれば遠ざかるほど、標準時と生活時間の間にズレが生じ、不便になってしまう。

 たとえば北京で正午といえば多くの人々が昼食をとる時間で、太陽は真上にきている。それに対し、新疆ウイグル自治区の正午は日が昇ってまもない早朝で、太陽は午後4時か5時頃にならないと真上にこない。これではさすがに生活に支障がでる。

 そこで新疆ウイグル自治区では新疆時間という非公式な時間を設け、それに合わせて鉄道の運行や放送などを行なっているのである。