東京女子御三家「桜蔭」の東大合格者数が増えた理由毎年作成している「卒業生からのメッセージ~職業って何?~」。中を見ると、さまざまな職業に就いている卒業生の活躍ぶりがよく分かる

飛躍のきっかけは共通一次試験

――どこの学校に進もうとか、自分の将来をどう考えるかといったキャリア教育を学校としてどのようになさっていますか。

齊藤 職業指導みたいなことは中1の時からやっていますが、中3の時に進学やキャリアのことを考えるため、「卒業生からのメッセージ~職業って何?~」を配布しています。その中に登場した卒業生の中から、生徒の希望も聞いて、高1の時に実際に学校に来ていただき、学年全体のお話とクラスに分かれて個別のお話をしています。

 2020年はオンラインで実施しました。生徒には自宅から参加してもらったのですが、アメリカやフランスからも卒業生に登場してもらえたことは良かったです。

――生徒のお母さん方も社会的に活動している方が多いと思います。特徴的な進路のようなものはありますでしょうか。

齊藤 女性が自立して一生働くとなると、どうしても医師や法曹といった資格の必要な専門職に目が行きます。それでも、国家公務員やマスコミにも多く進んでいます。お話しいただく卒業生の方も、出産や育児を経験した方なども呼ぶようにしています。卒業生にはいろいろな仕事を見つけてもらいたいなと思っています。

――私が中学受験塾を開いた当時、女子のトップ校は慶應義塾や青山学院、学習院共立女子といった大学の付属校でした。開成は都立高校が学校群を導入したときに浮上しましたが、桜蔭はどのタイミングで進学実績を伸ばしていったのでしょう。

齊藤 1979年から始まった共通一次(大学共通第1次学力試験)です。共通一次は受けなければいけない科目が多かったですよね。本校はそもそも必修の科目が多く、共通一次を受け、2次試験でも受験科目の多い学校に挑戦しようかなという生徒が増えたことが大きいと思います。当時も理系の生徒は半分くらいいました。

――桜蔭の入試問題は算数が難しい。国語も相当難しいですね。

齊藤 国語でも意識的に記述式の問題を増やしました。算数と理科、国語と社会と2科目ずつ一緒の入試が長かったのですが、平成16年度入試から4科に分けるにあたって、きちんと記述ができる様式に改めました。

――難関校が全般的に志願者数減の傾向でしたが、桜蔭は逆に増やした数少ない学校です。2021年の入試では面接を取りやめて、記述に代えていますね。

齊藤 そんなに保護者の面接がお嫌だったのかしら(笑)。それ以外には、特に増えた理由が思い当たりません。受験生の通学時間が90分以内ということは確認しています。最寄り駅がある都営三田線が東急線に乗り入れたことで、東京の次に多い神奈川からの生徒も増えたと思います。現住所がその基準に達していなくても、4月から引っ越すということであれば認めています。学年が上がると、学業が大変なのか、学校に近い所に引っ越される方もいらっしゃいますね。