創立100周年(1978年)を記念して立てられた「星陵われらあり」像。同窓会は如蘭会、後援会は星陵会。星陵とは、校地を含む一体の高台が“星ヶ丘”などと呼ばれたことにちなむ

都立の名門である日比谷高校校長に在任9年。2021年入試でも東京大学合格実績は全国の公立高校トップで、さらに合格者数を積み増した。なぜ躍進を続けているのか。そこには武内彰校長の粘り強い校内マネジメント改革への取り組みがあった。高校の3年間で私立中校一貫校に匹敵する教育力を発揮している理由に、森上展安・森上教育研究所代表が迫る。(ダイヤモンド社教育情報、撮影/平野晋子)

武内彰(たけうち・あきら)東京都立日比谷高校校長

武内彰(たけうち・あきら)東京都立日比谷高校校長

東京都立日比谷高校校長。1961年東京生まれ。東京理科大学理学専攻科修了。87年から東京都立高校の物理科教員として教壇に立つ。都立大島南高校教頭、都立西高校副校長、都東部学校経営支援センター経営支援主事、都立翔陽高校校長などを経て、2012年より現職。バドミントン部顧問。著書に『学ぶ心に火をともす8つの教え』(マガジンハウス)、『日比谷高校の奇跡』(祥伝社新書)。
 

名門校躍進の原動力

 学校群制度が東京都で導入される以前、1950~60年代を通じて、都立日比谷高校は東京大学合格者数で全国トップの時代が続いた。その後、冬の時代を迎え、2018年にほぼ半世紀ぶりに全国ベスト10に復帰、21年は前年比23人増の63人と大きく飛躍し、公立高校トップ、全国の高校の中でも8位にランクされている。

[聞き手] 森上展安・森上教育研究所代表
1953年岡山生まれ。早稲田大学法学部卒。学習塾「ぶQ」の塾長を経て、1988年森上教育研究所を設立。40年にわたり中学受験を見つめてきた第一人者。父母向けセミナー「わが子が伸びる親の『技』研究会」を主宰している。

――東京大学合格者数で、2021年は63人と大きく伸ばしました。

武内 いけるかな、と思っていました。

――それはなぜでしょう?

武内 二つの大きな要因があります。一つは、学年ごとの担任団を中心とした先生方の生徒との関わり方です。1年生の時から、学習・生活・進路について、励ましながら、意識を高く持たせるための働きかけをきちんと行っています。そのために、学年集会を年3~4回行い、成果と課題について全生徒に共通のメッセージを送り続けました。担任団のチームワークが大切になります。

――意識付けに成功したのですね。

武内  もう一つは、新型コロナ禍で休校となったとき、早くから生徒とオンラインでつながることができたことです。昨年4月中旬から、生徒の端末や自宅のネットワーク環境の状況を調査するのと並行して、オンライン学習支援を立ち上げました。4月末に全員の確認が取れたので、ゴールデンウイーク明けから同時双方向のオンライン授業を始めることができました。

――普段の対面授業通りに実施したのですか。

武内 最初はZoomの無料版だったので30分授業でしたが、6月からは有料版に切り替え40分になりました。普段の授業は45分間ですから少し短い。体育も芸術もカメラの前でやりました(笑)。

 通信の負荷も考えて、授業を中継しているときは生徒からの画像は止めていたので、先生方は生徒の反応が分からず苦労されたようです。Zoomの荒らしには注意しました。先生方はそれでも順応されたようです。

――学年団ということでは、中高一貫校の開成は担任が固定で6年間持ち上がり、灘も6年間ぎっしりやるときついので次の1年間は遊軍とするなど工夫されています。日比谷の場合は、3年間で仕上げていらっしゃる。よくできるものだなと思いました。教科学習の組み立てで工夫はされていますか。

武内 国語・数学・英語は高2の終わりまでには一定レベルにもっていくという日比谷の伝統的な文化があります。ただ、それだけでは間に合わないので、高2の11月以降、理科・社会のうち最低1科目にも取り組んで仕上げています。

 そこで威力を発揮しているのがミドルリーダーによる教科主任会です。この時期にこの科目をやるという自学習の指針を生徒に文書で示しました。これに基づいて理社に取り組んだ生徒たちが、高3の夏には中高一貫校の生徒に離されないくらいの学力を身に付けるという好循環が2~3年前から生まれてきました。

 また、単に教科学習にとどまらず、SSH(スーパーサイエンスハイスクール)課題研究や理数探究などの科目の学習を通して、大学以降の学問探究につながる学びを体験することや、海外研修への取り組みも生徒の知的好奇心を高めることにつながっています。

 公立高でも3年間できちんとできるということを、まだ途上ですが証明しつつあります。