大橋と高速鉄道の開通により、この3つのエリアは1つになり中国化することが現実のものとなった。香港のど真ん中にできた「香港西九龍駅」は中国の法律が適用され、執行官が中国から派遣されることで物議を醸した。2020年1月に筆者はここを訪れたが、駅構内は最新の監視カメラが無数に据え付けられ、外界とは明らかに異なる空間になっていた。

中国の「台湾統一」まで秒読み!?新たな交通計画で中台の海峡は繋がるか中国の法律が適用される香港西九龍駅(著者撮影)


 大橋の上では観光バスやタクシー、自家用車がポツポツと往来を始めていた。台湾でも中国のナンバープレートを付けた自家用車が台北の街を走り、中国のあらゆるサービスが上陸し、人民元が流通し、デジタル経済にのみ込まれ…といった変化が現実のものとなるだろうか。

 一方で、大橋開通がもたらす得失については十分な検証がなされていない。香港の場合、開通翌年の2019年には香港でデモが過激化し、2020年には新型コロナウイルスの感染拡大により、大陸からの人の往来が途絶えてしまったからだ。

 仮にデモもコロナ禍もなく、橋や高速鉄道が大陸から多くの旅行客や商用客を運び続けていたとしたら、香港は間違いなく大陸マネーに沸いていただろう。それが、さらなる住宅価格の高騰をもたらし、格差により社会は分断され、若い世代は未来への希望を失うという悪循環を余計にひどくしたかもしれない。

 もっとも大橋開通は“一体化”のひとつの象徴にすぎない。2020年は法の執行や議会の制度において、一段と中国の支配が強まったからだ。

 福州から台北に延びる支線の建設計画は、台湾を“統一”するという中国の一貫した意思の表れであり、もはや避けられない運命にあるということを意図的に伝えている。過去の交通計画が5カ年計画の中で確実に実行されてきたことからも、これを単なる「構想」と見ることはできない。交通計画は、今後15年以内に東アジアで起こる前代未聞の変化を暗示している。