誤解しないでいただきたいのですが、東芝の社外役員が「東芝に消えてほしい」と思っていると言っているのではありません。もちろん今回の騒動を見ると、1人や2人は東芝に消えてほしいと思っている人がいたと思える節はありますが、それを防いだのは取締役会でした。

 しかしその取締役会も、基本的なスタンスとしては株主に対する責任に目が向いています。あくまでスタンスは株主寄りであって、もし仮に今回の提案よりもずっと儲かる東芝買収・分割提案が持ち込まれたら、それを冷徹に評価し判断を下すであろう、プロの経営者たちです。

 資本主義の原則としては、現経営陣はそのように動かざるを得ません。だったら、従業員の代表である執行役員たちは、「東芝という船を漕ぐオールを取り返す」対抗策を考える時期に来ているのではないでしょうか。東芝の企業価値が2兆円しかないことを意識すれば、1つの方法として、従業員による東芝買収を考えるタイミングなのかもしれないと私は思います。

「お前のオールを任せるな」
従業員による東芝買収の選択肢も

 従業員による大企業買収というのは、あまり耳慣れない言葉かもしれません。有名な事例としては、1993年にユナイテッド航空の従業員が親会社を買い取り、世界最大の従業員所有会社になったケースがあります。ただこの買収事例は、利用者へのサービスが悪くなったなど、経営学の世界ではどちらかというと失敗事例として評価されています。

 いずれにしても資本主義が進化したことで、企業買収の手法は非常に多様化してきています。ですから海外のファンドだけでなく、東芝の従業員が東芝を買収する現実的な手法もあるわけです。

 さらに言えば、旧東芝メモリであるキオクシアは、近々3兆円規模で再上場ないしは売却されることが想定されますが、それだけの価値があるならば官民ファンドがキオクシアを買い取り、その子会社として東芝を買収してグループを再統合させるといった荒業だって、手法としては可能なのです。

 そして、こういったことを考えなければ、いつか東芝が完全に消えてしまう日がやってくると私は危惧しています。東芝従業員の皆さんは、どうお考えでしょうか。

(百年コンサルティング代表 鈴木貴博)