日本銀行は3月に実施した金融政策の「点検」を経てもなお、マイナス金利の深掘りは可能だと明言している。仮にそれが実現すれば、欧州のように個人の預金にまでマイナス金利が課せられる状況が日本に到来することが現実味を帯びてくる。ドイツでは個人預金にマイナス金利を課す銀行がこの数年で急増。今や300行以上の銀行がそうなっているという。(東短リサーチ代表取締役社長 加藤 出)
ドイツでは300行以上の銀行で
個人預金にマイナス金利適用
日本銀行がマイナス金利政策を開始して5年以上経過した。金融市場ではマイナス金利の取引は常態化しているが、日本の銀行は企業や個人の預金口座にマイナス金利を適用することは避けてきた。このため大半の国民は、同政策をほとんど実感していないと思われる。
一方、欧州では企業の預金口座へのマイナス金利適用が既に広範囲に広がっており、さらに個人の預金にも銀行がマイナス金利を課す動きが昨年来、急拡大している。
欧州中央銀行(ECB)は現在、金融機関にマイナス0.5%の金利を課している。ドイツの金融商品比較サイト「ベリボックス(Verivox)」の集計によると、同国内で個人の預金にマイナス金利を課していた銀行の数は、2017年6月は11行だったが、19年11月には21行に増えた。そして20年には、2月は41行、5月は94行、9月は126行と増加。さらに今年1月は197行、この4月は300行以上と激増してきた。
これはオンライン上でマイナス金利適用を表明している銀行の数なので、そうでない銀行も含めればさらに数十行増えるもようだ。
この背景には、コロナ禍における預金急増がある。