ダイヤモンド社の書籍編集局では、いま中途採用で編集者を募集しています(詳しい募集要項はダイヤモンド社の採用情報ページおよび「マイナビ転職」をご覧ください)。そこで、現場で働く編集者たちに、職場の雰囲気、仕事内容、一緒に働きたい人物像などについてインタビューしました。ホンネ炸裂のトークをお読みいただき、我こそは!と思われた編集者の皆さまは、ぜひともご応募ください。応募〆切は「2022年6月6日(月)」です。本記事では、女性実用ジャンルの編集者・長久恵理の、市場を重視した本作りの秘訣などをご紹介します。(→他メンバーのインタビュー記事および座談会記事も是非お読み下さい!)
ビジネス書を得意とする会社で
女性実用のジャンルを切り拓く
──長久さんは2018年3月入社なので、ちょうど4年経ったところですね。ダイヤモンド社に転職しようと思ったきっかけは何でしたか?
長久恵理(以下、長久) 前職の出版社には6年あまり勤めたのですが、その会社独自のノウハウをだいたい学んでうまく使いこなせるようになってきたな、入社時にその会社でやりたいと思っていたことができたなというタイミングだったんです。そこで、「次はどうしようか」と。
──前向きな転職だったのですね。
長久 異業種も含め、新たな環境でまたイチからやってみたいという気持ちでした。決め手になったのは、自由に企画を立てさせてくれる雰囲気だと聞いたこと。それと、私が得意とするジャンルが、ダイヤモンド社の得意ジャンルと被っていないところに魅力を感じました。
長久恵理(ながひさ・えり)
大学卒業後、他の出版社を経て2018年入社。担当書籍は『そろそろ、ジュエリーが欲しいと思ったら』『「育ちがいい人」だけが知っていること』『もっと!「育ちがいい人」だけが知っていること』等。
あとは、編集者のノルマの考え方が違う点はよかったかも。前職では新刊売上のみで評価されたので、今の3倍以上のスピードで新刊を出さなければなりませんでした。でもダイヤモンド社では6年分の既刊書の売上で評価されるので、1つの企画をじっくり考えて、ロングセラーにするにはどうすればいいか練るようになりました。
──前職ではどのようなジャンルを担当されていたのですか?
長久 女性実用です。初版から5万部を刷るようなシリーズをつくれるようになりましたし、新しいジャンルの開拓という目標も叶ってきたタイミングでした。ダイヤモンド社の求人は知人に教えてもらったのですが、ちょうど女性実用のヒット作が出ている時で、ビジネス書の会社というイメージが強かったですけど、すごくいいんじゃないかと思いました。
編集者一人ひとりが持つ
クリエイティビティを評価する会社
──入社して、どんな職場だと感じましたか?
長久 ダイヤモンド社は、編集者の先にどんな著者がいるかではなく、編集者自身をすごく重視していると感じます。著者の人気や人脈を重視しすぎると、クリエイティブ以外の能力で評価されることになりがちです。どれだけ有名な著者とお付き合いしている人かとか。
書籍は、雑誌のように定期で続けていくものではなくて、一本一本で勝負するということが良い部分だと思うんです。でも、編集者の先にどういう著者がいるかという点に評価基準を置いてしまうと、その良さが失われますよね。もちろん編集にはこうしたクリエイティブ以外の能力も重要ですが、ダイヤモンド社の基準のほうがいいなと感じています。こういう価値観って、意外とほかの会社にはないものだと思います。
──なるほど! 言われないと気づきませんね。ほかにも、他社にない特徴はありますか?
長久 どの出版社にも圧倒的な存在の管理職やエースのような人がいて、若い人や売れていないタイミングにある人は、そのノウハウの踏襲を指示されるケースが多いと思います。会議に参加して「こういうの、いいと思います」と言っても、存在感のある人のやり方と違う提案は通りにくい。そういう会社は案外多いものです。
でも、ダイヤモンド社の場合は、ビジネス書という同じカテゴリーの中にたくさんの編集者がいて、それぞれのスタイルで、それぞれのヒットの出し方があり、それがすごくいい感じで共存している。そこが特徴的だと感じます。自主的な勉強会が頻繁に行われていて、ノウハウが共有されているのも良いところですね。
──たしかに、いろいろな勉強会が頻繁に行われていますね。
長久 前職にはなかった文化です。みんな自分の能力をもっと高めようという気持ちがあるんだと思います。上意下達の「縦」ではなく「横」に共有するという形で、それぞれが自分で調整しながら能力を伸ばしていると感じます。勉強会ではいろいろな話が聞けて、しかもみんなの手法や着眼点が全然違うので、すごく勉強になっています。
自分の感覚と市場のズレを
確認するためにデータを見る
──ビジネス書を得意とするダイヤモンド社に、長久さんが得意とする女性実用を手掛ける編集者は少ないですが、企画会議などでやりづらさはないですか?
長久 やりにくいと思ったことはありません。細かいことなど、同じジャンルの人と話したほうがいいこともありますが、そうではない目線でフラットな意見を聞かせてもらえる環境が大きなメリットだと感じています。
ただ私は、これまで女性をメインターゲットにした会社で仕事をしてきたので、ダイヤモンド社のような女性向けビジネスのベースがない会社で働くようになって、より丁寧に市場を見るようになったと思います。自分の得意市場とダイヤモンド社の得意市場の重なる部分を見つけて、そこにうまくアジャストしていければいいなという感じです。
──長久さんはよくデータを見ていますよね。
長久 データは、企画を考えたあとに、そのテーマがもつ市場の大きさを確認するために見ます。自分が何となく「こうだろう」と思っていたことが、データを確認したら全然違うということは、よくあります(笑)。
──具体的には、どんなデータを見るんですか?
長久 主に書籍の販売冊数や推移のトレンド、購買層の内訳などです。あとは、世の中の動きを注意して見ていて、それと関連書籍の動きを比べて見たりします。
例えば、昨年のロックダウン期間中、私が訪れた園芸ショップはどこも観葉植物がすごく売れていて品切れ状態だったので、植物を育てたい人が増えていると感じました。そこで、グリーンや園芸をテーマにした書籍の売上が前年に比べて高いのか、そもそもこのジャンルの本はどのくらい売れるものなのかを確認したり。あるいは、グリーン特集をしている雑誌の売上がインテリアやグルメなど他の特集に比べて高くなっているのか……と見ていく感じです。
──実際、見てみてどうでしたか?
長久 確認してみると、期間中にグリーン関連の売上が特別に上がっているということはなく、市場規模自体も大きくないことがわかりました。女性実用では流行の把握も重要ですが、「いま、これが流行ってきているんじゃないか」と感じてもデータを調べて数字に変化がない場合は、たんに自分がハマっているだけですよね(笑)。そういうことをいちいち確認して、主観的になりすぎないようにしています。
──長久さんが企画した『「育ちがいい人」だけが知っていること』は、第二弾の『もっと!「「育ちがいい人」だけが知っていること』とあわせて60万部を超える大ヒットになりました。この本はマナー本に見られがちですが、実は「マナーの手前でルール化されていない暗黙のルール」を集めたという、長久さんの立てたコンセプトが秀逸だなと思います。どうやって生まれたのですか。
長久 この本は、とくに大きな市場を狙うことを念頭に企画しました。自分の得意ジャンルと、ダイヤモンド社が売りやすいジャンルが重なるもの。そして、普段からみんなが感じているコンプレックスと重なるもの、という視点で考えました。
“コンプレックスもの”は売れやすく、容姿であればダイエットやファッション、学歴なら学び直しや教養、コミュニケーションなら話し方など、そのほとんどが100万部のヒットが狙えるジャンルです。「育ち」も同じようにコンプレックスに感じている人が多いのに、これまで本としてまとめられたものはなかったんです。
著者はマナーの先生ですが、「育ち」を「マナー以前の常識の部分」と考えると、ダイヤモンド社がビジネスに次ぐ得意ジャンルとする「常識」「教養」とも重なるので、企画として成立しました。
書店営業部、宣伝プロモーション部との
連携でベストセラーが生まれる
──実際に大ヒットしましたよね。ダイヤモンド社でヒットをつくる法則はつかめましたか?
長久 いや、全然つかめていないですよ! たまたま売れて良かったです(笑)。私は、過去に売れた本も、どれも同じやり方ではつくっていないんです。例えば、市場を見てつくると言いましたけど、伝えたいことや、著者から企画を考えることもあります。「これが私のやり方」という決まった方法では本をつくっていないかもしれません。
ただ、ダイヤモンド社は女性実用がメインではないので、より大きな市場、または多くの市場を同時に狙ったほうがいいと考えるようにはなりました。
例えば、『「育ちがいい人」だけが知っていること』で私が想定していた市場は、まず「コンプレックス」「教養」「常識」、次に「婚活」「お受験」「子育て」「マナー」「モテ」です。でも、実際に発売したら、ダイヤモンド社との接点は「就職活動」でした。最初は「そこ1点で売れている」と言われたくらい。私自身はまったく狙っていませんでしたが、市場を大きくとっていたからこそ生まれた接点だと思っていますし、ダイヤモンド社だからこそ生まれた市場でもありました。
──『「育ちがいい人」だけが知っていること』の宣伝や販促の面で印象に残っているのは?
長久 店頭の購入特典としてポチ袋やサンキューカードをつける施策を書店営業部が展開してくれて、ロングセラーになりました。発売から時間が経つとどうしても売上は下がってきてしまいますが、発売から2年が経過しても順調に売れ続けているのは、営業部が丁寧にケアしてくれているおかげです。
本のプロモーション面では、「書籍オンライン」で発信できるメリットがかなり大きいです。他のメディアで取り上げてもらうのを待つのではなく、自分たちから仕掛けられますし、出した記事の反応から次の記事の出し方を考えて調整することもできます。『「育ちがいい人」だけが知っていること』は「書籍オンライン」の記事発信をきっかけに売れ始めたのですが、好評だった記事が他サイトにも転載してもらえたりして効果が広がりました。
また宣伝プロモーション部が、さまざまに切り口を変えながら広告を打ってくれたことで、先に挙げた市場へどんどん広がっていきました。ほかにも「女子アナの格付に向いている」「クイズ形式にしやすい」といった面白い切り口を考えてテレビに売り込んでくれたりもしました。ダイヤモンド社の本は、書店営業部、宣伝プロモーション部との連携によりベストセラーにつながっていくのだと思います。
今までにないやり方で仕事をする人に
新しいノウハウを持ち込んでもらいたい
──では最後に、ダイヤモンド社に向いていると思う編集者のタイプや、具体的にどんな人に来てほしいか教えてください。
長久 ダイヤモンド社は、自分のやり方を見つけていくことが許されている貴重な職場です。一般的に、若い人は自分のやり方を試せるようになるまでに時間がかかることもあると思います。私も前職では、上司のやり方で結果を出して、ようやく自分のやり方を試すことができました。でも、ダイヤモンド社だと、その手順を踏まなくていい。自分のやり方を試してみたいと思っている人には向いていると思います。
個人的に来てほしいのは、今までにいないタイプの人ですね。ダイヤモンド社で現在売れているジャンル以外のジャンルが得意な人や、ウェブなど他メディアでの成功体験も持っているような人に来てもらいたい! 新しいかたちのベストセラーを見てみたいし、お互いに切磋琢磨していけたら嬉しいです。
(終わり)
※具体的な募集要項はダイヤモンド社の採用情報ページをご覧ください。また「マイナビ転職」にも詳しい情報が掲載されています。
※本記事以外にも、書籍編集部メンバーのインタビュー記事や座談会記事がお読みいただけます(記事一覧はこちら)。いずれも、職場の雰囲気や仕事内容をホンネ炸裂で語っています。