【編集者募集・ダイヤモンド社】「3冊連続で20万部の本」が出せたワケ

ダイヤモンド社の書籍編集局では、いま中途採用で編集者を募集しています(詳しい募集要項はダイヤモンド社の採用情報ページおよび「マイナビ転職」をご覧ください)。そこで、現場で働く編集者たちが、職場の雰囲気や仕事内容、一緒に働きたい人物像などについて語りました。ホンネ炸裂の記事をお読みいただき、我こそは!と思われた編集者の皆さまは、ぜひともご応募ください。応募〆切は「2022年6月6日(月)」です。本記事では、入社以来ベストセラーを連発する注目の編集者・種岡健の本作りの秘訣をご紹介します。(→他メンバーのインタビュー記事および座談会記事もぜひお読み下さい!)

ダイヤモンド社で学んだ
「ミーハーでいること」の大切さ

 今回、ダイヤモンド社で新たに書籍編集者の募集を行っており、この機会に私の経験をもとにダイヤモンド社がどういう会社か、どういう働き方ができるかを紹介します。私は、2018年11月に中途で入社しました。今は第一編集部に所属して、主にビジネス書全般を編集しています。

【編集者募集・ダイヤモンド社】「3冊連続で20万部の本」が出せたワケ種岡健(たねおか・けん)
書籍編集局第1編集部

大学卒業後、他の出版社を経て2018年入社。担当書籍は『投資家みたいに生きろ』『1%の努力』『精神科医が教える ストレスフリー超大全』『リーダーの仮面』など。直近の担当作は『数値化の鬼』。サウナとお酒が好き。

 せっかくの機会なので、キレイゴト抜きで恥ずかしい話も含めて書きます。特に、編集者として、ダイヤモンド社では「もっとミーハーでいることが大切だ」と気づかされたので、その話をしようと思います。

 あるアーティストは、好き勝手に自分がやりたい曲を作り続けて事務所に迷惑をかけた後、「そろそろちゃんとヒット曲を書くね」といって作った曲が200万枚を超えるヒットになったそうです。

 これを聞いて、「魂を売ってるな」と感じるか。「プロの仕事はすごいな」と感じるか。もし、後者であるならば、この記事で転職のきっかけになるヒントが得られるかもしれません。

「10万部超えのヒットを作りたい」
それだけを考えて入社した

 私は編集者になりたての頃、「このテーマは自分しか思いつかないだろう」「こんな著者はまだ誰も知らないはずだ」という自分本位の気持ちで本を企画していました。感覚でいうと、自分の殻に閉じこもって出てこない、ニッチな企画の立て方でした。

 そうやって編集した本は、あまり多くの人には届きませんでした。それでも、モノを作っている喜びは大きくて、初めて見本ができた瞬間、書店に本が並んだ瞬間、重版がかかった瞬間……など、徐々に喜びも大きくなって、その先に「ベストセラーを出したい」という気持ちが膨らんできたのが、編集者になって4年目の頃。

 その延長線上に、「10万部」という数字がありました。

 ある先輩は次のような話をしてくれました。「10万部には特別な意味がある。それは、日本人を1億人としたときに、最も影響力のあるメディアはテレビだと言われているが、そのテレビでは視聴率10%の1000万人が見ている。そのうちのさらに1%がCMなどを見て商品を買う。つまり、テレビの人気コンテンツでようやく10万人が財布の紐をゆるませる。そう考えると、10万部の本というのは、本のコンテンツだけで10万人がお金を出してくれていて、テレビコンテンツに匹敵する影響力だ」と言うのです。

 編集者1人の企画によって、それだけの影響を与えられると考えたとき、ミーハーな気持ちがくすぐられて、自分もそんなことをやってのけたいなと思うようになりました。

 それからは自分の殻から出て、半径1メートルくらいのことをテーマにするようにしました。すると、少しずつ結果が出るようになったのです。

 この業界では、担当作は名刺代わりになります。「これまでどんな本を手掛けてきたんですか?」と聞かれて、広く知られたヒット作を伝えると、一目置かれます。そんな自信になる一冊を作りたい。それがあることで、もっと自由に、もっと伸び伸びと本づくりもできる。そんな好循環が生まれると思ったのです。

 そんなことを考え出した頃、ダイヤモンド社は、「つねに安定してヒットが出ている」「誰か1人の圧倒的な実績ではなく、さまざまな方が順番に活躍している」という環境に見えました。出版業界は狭いので、いろいろな話を聞いて、ここに身を置けば、自分も勝手に成長できると思い、2018年、29歳のときに入社しました。

【編集者募集・ダイヤモンド社】「3冊連続で20万部の本」が出せたワケビジネス書や実用書など、これまで8冊の本を編集。1年で2〜3冊のペースでじっくり作っています。

入社したことで気づいた
大きな「誤解」

 入社してから大きく考えが変わったことが3つあります。

 1つは、「著者の知名度」への誤解。それまでの私は、とにかく有名な著者や、大きく世に出かかっている著者(「情熱大陸」が追っているような人)に、誰よりも早く声をかけるスタイルで本を作っていました。そういう著者にはファンやSNSのフォロワーが多くついており、多少、本の作りが粗くても売れてしまいます。手を抜いても仕事がうまくいってしまう、諸刃の剣でした。

 ただ、そういう本は、短期的なヒットで終わりがちです。有名な著者の本でも、「著者のことを知らない人に届くくらい強いコンセプト」を考えないと大きく広がらないということです。

 2つ目は、「企画の通過率」への誤解。会社員として考えると、社内の会議でスムーズにOKが出る企画を立てる能力があるほうが、生産性は高くなります。

 たとえば、いま売れているベストセラーを見つけてきて、「これと似たようなものを作ります!」と言ったとすると、誰からも文句を言われずに企画を通すことができます。しかし、ダイヤモンド社では、そういうことが許されない空気があります。二番煎じは恥ずかしい。そんな風土があります。

 99%はロジックや方法論でまわりを固めたとしても、根幹にある1%は、「自分が読みたい」という思いが原動力になっています。それは、社内で共有される企画書や会議から感じ取ることができます。業界屈指の優秀な編集者の方々の企画書を日常的に読めることも、入社する大きなメリットかもしれません。

 3つ目の誤解が、「本を出すことがゴール」と考えていたこと。著者に企画を提案しても、簡単にOKはもらえません。妥協案として「他の企画だったらOKだ」と言われることがあります。

「プレゼンスキルについて本を書いていただけませんか?」
「プレゼンもいいけど、今はゴルフに興味がある。ゴルフに関する本なら書けるよ」

 そう言われるようなときがあります。「ゴルフか……」と、あまりピンとこなくても、会社員として本を出さないといけないとき、悪魔がささやきます。「それで出しちゃいなよ」と。

 多くの出版社では、「刊行点数」がノルマとしてあります。すると、それを満たすために、納得していないゴルフの企画でさえ、自分をダマして進めてしまう可能性が出てきます。ゴルフは特殊な例ですが、これに近い経験は誰しもしたことがあると思います。

 ダイヤモンド社では、刊行点数ではなく「売上」が目標です。半期ごとに個人別の予算が振り分けられ、その金額を達成することが求められます。その売上予算を達成するためには、個人によって刊行点数は変わってきます。金額さえクリアしていれば、無理に多くの本を刊行する必要はありません。

 なので、著者からの納得していない提案ともちゃんと対峙できます。「本当にやるべきか?」「ちゃんと売上を立てられるか?」と、企画に対して目が曇らなくなります。

本づくりで盲点だった、
「ある言葉」

 そうして誤解が解けた後、私は大きな軸になる言葉を1つ得ました。私の部内では、「本トレ(本づくりトレーニング)」という本づくりの方法論を学ぶ勉強会をしています。その中の1講座として、「ベストセラーの研究」をしました。そこでの出来事です。

 これまでも、自主的にベストセラーを手に取ることはありました。しかし、そのときの気持ちは、斜に構えて、「タイトルがいい。デザインがいい。著者が有名。だから売れているんだろう」という表面的なことしか見ていませんでした。その結果、ベストセラーをマネしたタイトルを付けて同じデザイナーさんにお願いをすれば売れるような錯覚に、どんな編集者も陥ると思います。

 部内の勉強会で学んだのは、「ベストセラーの多くには『自己啓発の要素』が含まれている」という本質的な気づきでした。

「料理書やダイエット書であっても、広く手に取られている本は人生論になっている」
「一見、教養的なテーマであっても、読者を啓発する言葉が込められている」

 そんな発想を得ることができました。これは自分にとっては盲点でした。というのも、前職の傾向で私は自己啓発書を担当することが多くありました。

 ただ、自己啓発書は、根っからの本好きからは軽く見られがちな面があります。私自身も、表立っては純文学や哲学書を読み、「死んだ作家の本しか読む価値がない」と言いながら、隠れてこっそり自己啓発書のベストセラーを読むような学生だったので、気持ちはわかります。

 しかし、ベストセラーに自己啓発の要素が含まれているのであれば、これまで啓発書を作ってきたことは武器になるなと思いました。私は、他の優秀な編集者の方々に比べると、教養がありませんし、好奇心もかなり薄い。専門的に詳しい分野もなければ、体系的に本を読んできた体験もありません。

 自分の読書の原体験は、受験参考書を何度も読み返しながら、受験ノウハウより「お前でも受かる。大丈夫だ」というメッセージを求めていたことです。こういう「啓発されやすい」という経験が逆に武器になるのだと、背中を押される感覚を覚えました。

大きな自信作になった
『リーダーの仮面』

 そんな学びを経て、2020年に『リーダーの仮面』というリーダーシップ・マネジメントに関する本を作りました。

 マネジメントのジャンルは、「ティール組織」「パーパス」「オーセンティック・リーダーシップ」など、新しい概念が次々に出てきます。東京のど真ん中でメディア関係の仕事をしていると、そういう新しいものに飛びつきたくなります。

 しかし、「そうはいっても、みんな従来のピラミッド組織で働いているじゃないか?」という“そもそも論”があります。“そもそも論”の企画は、強いです。

「そもそも文章はテクニックで書くものなのか?」
「そもそも料理はレシピを見て作るものなのか?」

 “そもそも論”から入る企画は、誰もが潜在的に持っている感覚に近く、大きく売れる可能性を秘めています。著者の安藤広大さんの話を初めて聞いたとき、そんな“そもそも論”と同じ感覚を持ちました。

 とはいえ、類書も少なく、「仮面」という言葉を使ったヒット作もない。でも、「仮面をかぶってリーダーとしての機能を果たす」というコンセプトの強さはあると思えました。

「最初の打ち合わせでシンプルに驚きを感じた話」は、まさに自分が啓発された瞬間と同じで、企画につながりやすいです。ここでも、先ほどの「啓発」の話がつながってきます。

 その後、上司との企画のすり合わせや、企画会議でも、その意図を汲み取っていただいて、背中を押してもらいました。作っている過程で、過去のリーダーシップの本にタイトルやデザインを寄せる誘惑も、自分の中で何度も訪れましたが、ファーストインプレッションを最後まで貫くことにしてみました。

リスクを負うことができる
「まわりの環境」

 そうして編集者は企画段階でリスクを取ります。「この企画でイケます」という思いは、正直、何度やっても予測できないものです。そのリスクを負って、本は書店に並びます。ちゃんと本が売れたとき、次は、営業部にリスクのバトンが渡ります。

【編集者募集・ダイヤモンド社】「3冊連続で20万部の本」が出せたワケ営業部・宣伝プロモーション部と協力して、ひろゆきさんのスタンディパネルを作成。書店さんでの大展開につながりました。

 ダイヤモンド社の特徴は「2刷が大きい」ということです。私が経験したものでも、2刷は8000部や1万部、3万部、最大で7万部が決まることもありました。そうやって、リスクのバトンがつながれて、あれよあれよという間に、5万部、10万部を突破することを経験できました。

 その間には、宣伝プロモーション部によるさまざまな施策や、編集者自ら書籍オンラインで記事を発信することで、どんどん売上につなげることができます。

 編集者は「本を作ったら終わり」ではなく、1冊の本を売るために何度でも手を掛けることができるのです。『1%の努力』『服が、めんどい』という本では、発売から1年が経っても、オンライン記事がたくさん読まれることによって重版に結びつけることができました。ロングセラーにすることは自分だけでなく、著者や会社、業界全体も幸せにします。

 そういったロングセラーを作るベースにあるのが、「堂々と著者の王道企画を出せる」という会社の強みです。他の出版社であれば、「差別化は何?」「類書との違いは何?」という細かい差異が問われますが、ダイヤモンド社では定番書のヒットを狙うことができます。

 たとえば、『ストレスフリー超大全』という本では、著者の肩書きが精神科医ですが、他社では「アウトプット」をテーマにした本が大ベストセラーになっています。しかし、私が立てたのは、精神科医ならではの“ど真ん中の企画”でした。「精神科医はメンタル面を治療するのだから、ストレスフリーになれる方法をまとめよう」という、とてもストレートなもの。別の出版社なら、他社のベストセラーに寄せたテーマを求められたかもしれません。

ミーハーな人、求む

 その結果、2022年4月現在、『1%の努力』44万部、『リーダーの仮面』32万部、『ストレスフリー超大全』25万部という、3冊連続で20万部を超える結果につながりました。

【編集者募集・ダイヤモンド社】「3冊連続で20万部の本」が出せたワケ

 ここでの話は、「10万部のヒットを出すこと」を前提にしましたが、もちろん、そのようなタイプの編集者だけが集まっているわけではありません。高価格帯の本でしっかり売上をあげたり、独自のジャンルを切り開いたり、新人の著者を開拓したり、さまざまなアプローチで活躍することができる職場です。

 唯一、共通していることは「1冊1冊ちゃんと納得して作ること」だと思います。もちろん、安易にマネして作らないということは、答えを自分なりに見つけるということで、厳しさもあります。こうしろと言われることもありません。

 編集者という仕事は、会社員でありながら、芸人やアーティスト、映画監督に似ている側面もあります。「客にウケたい」「たくさんの人に曲を届けたい」「人生を変える映画を作りたい」そういう思いを持つことは、ちょっと恥ずかしいことですが、でも、編集者として影響力を与えられる立場にいるのだから、一度それをやり切ってみるのもよいと思うのです。

 自分が「これを読みたい」という欲求に向き合ったり、「読者の人生を変えるんだ」と公言したり、自分の編集論を発信したり。そういうことを恥ずかしがらずにやってみていいんじゃないかと思っています。それが、最初に書いた「もっとミーハーでいい」という提案です。

 特に、経験が浅くても「なんとなく本づくりの方法が掴めてきたかな?」というくらいの若い方に、ぜひ来ていただきたいなと思っています。SNSで発信している編集者もどんどん増えていますが、方法論や仕事論、編集論を語ることは、なかなか恥ずかしいことです。ただ、ミーハーさは、開き直れば、かなり強いです。

「この本は、こんな狙いがあって……」
「あのベストセラーには5つの工夫があって……」

 と、堂々と編集の話を語ることができる環境が、ダイヤモンド社にはあります。社内は編集マニアやこだわりの強いタイプが多く、ミーハーに編集論や仕事のことを話せる環境が用意されています。

 ぜひ一度、編集者デビューした気持ちで、一緒に働きませんか?

(終わり)

※具体的な募集要項はダイヤモンド社の採用情報ページをご覧ください。また「マイナビ転職」にも詳しい情報が掲載されています。
※本記事以外にも、書籍編集者のインタビュー記事や座談会記事がお読みいただけます(記事一覧はこちら)。いずれも、職場の雰囲気や仕事内容をホンネ炸裂で語っています。