ダイヤモンド社の書籍編集局では、いま中途採用で編集者を募集しています(詳しい募集要項はダイヤモンド社の採用情報ページおよび「マイナビ転職」をご覧ください)。そこで、現場で働く編集者たちが、職場の雰囲気、仕事内容、一緒に働きたい人物像などについて語りました。ホンネ炸裂の記事をお読みいただき、我こそは!と思われた編集者の皆さまは、ぜひともご応募ください。応募〆切は「2022年6月6日(月)」です。本記事では、ダイヤモンド社で児童書ジャンルを切り開いた編集者・金井弓子が、ビジネス書「以外」の本作りの環境についてご紹介します。(→他メンバーのインタビュー記事および座談会記事もぜひお読み下さい!)
リアルな中の人の声、書いてみました。
こんにちは。ダイヤモンド社編集部の金井です。書籍編集局の第1編集部に所属し、おもに児童書を編集しています。
金井弓子(かない・ゆみこ)
大学卒業後、他の出版社を経て2016年入社(入社時27歳)。担当書籍は『楽しくわかる!体のしくみ からだ事件簿』『せつない動物図鑑』シリーズ、『東大教授がおしえる やばい日本史』シリーズ、『だれかに話したくなる あやしい植物図鑑』『わけあって絶滅しました。』シリーズなど。
「ダイヤモンド社で児童書を作っています」と言うと、意外な反応をされることが多いです。それもそのはず、ダイヤモンド社で児童書の編集者はわたしだけ。2016年11月にわたしが入社するまでは、ひとりもいませんでしたし、いまもひとりしかいません。正直、ちょっとさみしいです。
入社から5年がたち、長期で売れるロングセラーシリーズに恵まれ、社内で児童書ジャンルが定着してきた実感はあります。でも、わたしだけでは年に数冊出すのが精いっぱい。本当は、もっと多様な児童書をうちの会社から送り出したい願望がありますし、社内でラフの切り方について語り合える人がいたらどんなに楽しいかしら……と思っています。
そこで、現在募集中の中途採用にひとりでも多くの児童書編集者の方にご応募いただくべく、あくまでわたしの主観ではありますが「児童書編集者にダイヤモンド社をおすすめする理由」を書いてみようと思います。
考えてみれば、ダイヤモンド社って「ビジネス書」のイメージが強いので、児童書編集者が応募するにはけっこうハードルが高い気がします。ジャンルが違うと知り合いも少ないので、雰囲気もよくわからないし。しかし、実際に働いてみた実感として、意外にも(?)ダイヤモンド社は児童書編集者にとってわりと働きやすい環境だと思います。
応募をご検討中の方、ちょっと興味があるけど「突然ビジネス書を作ることになったらどうしよう」「好きな企画ができなかったらいやだな」「上司がこわい可能性もあるぞ」とモヤモヤしている方に、ぜひご一読いただければ嬉しいです。
(1)企画と予算の自由度が高い
ダイヤモンド社の編集部の雰囲気をひとことで言えば「自由」です。各々の編集者が、自分のやりたい企画を、やりたいようにやっている。もちろん、なんでもかんでもやり放題なわけではありませんが、やりたいことを実現しやすい環境なのは間違いありません。
とくに企画の自由度はかなり高く、“類書”がなくても、はじめて本を書く著者でも、自分にとって初挑戦のジャンルや内容の企画でも、説得力がある企画書を作れれば採用されます。
わたしが転職してすぐ担当した『せつない動物図鑑』は翻訳書です。それまで翻訳書を担当したことはありませんでしたが、上司に「こういう企画があるんですけど……」と相談したところ、あっさり「おもしろそうだね」と後押ししてもらえて企画通過しました。
やりたい企画がやれるって、何より大事だと思います。
企画が通ってからの編集作業も、とても自由度が高いです。とくに児童書編集者のみなさんは「予算」について悩まれる方が多いのではないでしょうか。大量のイラストや図版、複雑なデザイン……どれもコストがかかりますが、クオリティの高い本にするためには必要なコストです。だから「絶対〇〇〇万円以内にして」と厳命されると非常に苦しい気持ちになるもの。
ダイヤモンド社では、コストの設計もかなり編集者の裁量にゆだねられています。いろいろやりくりは必要ですが、児童書を作るためのきちんとした製作費が使えると思います。
当然、限度はあります。初回コストをかけすぎれば採算がとれないし、原価率が高いほど重版がかかりにくくなるので、結局本にとってよろしくありません。そのバランスを考えるのは悩ましいですが、はなから考えられないより、うんうん悩む余地がある方が、わたしは好きです。
(2)1冊にかけられる時間が長い
ダイヤモンド社には発刊点数のノルマがありません。児童書はデザインが変則的だったり、イラストが大量に入ったりと工数が多いため、個人差はありますが制作期間は最低6カ月くらいかかる場合が多いです。わたしの場合、ああでもないこうでもないと試行錯誤し、各所をいじくり回すため、1年以上かかることもあります。
わたしのようなタイプの編集者にとって、早く・多く作ることを評価の指標にされるのはかなり辛いです。だから点数のしばりがなく、自分のペースで編集できる評価システムは、すごく好都合でした。
しかし、人生は有限です。本当はもっとたくさんの本をつくりたい。だから焦ったりもするのですが、上司が「時間がかかるのはしょうがないので、存分に作り込んでいい本にしてくださいね」と理解を示してくれるので、安心して時間をかけています。
そのせいでコリャ半端なモノは作れないな……と変なスイッチが入ってしまい、本に巨大ポスターをつけてしまったこともあります。こういう挑戦ができるのは、この上なく楽しいです!
では、ダイヤモンド社にはノルマがないのか? 当然そんなことはありません。点数ノルマがない代わりに、金額の目標があります。目標金額は入社年次や職位によって異なりますが、半期ごとにどれくらい目標を達成できたかを評価されます。
少ない点数で目標金額をクリアするには、1冊あたりの売り上げを増やさなくてはなりません。会社って、さすがにそんなに甘くはないのですね……。
金額をどうクリアするかは、編集者それぞれのスタイルに委ねられています。点数を多く出すタイプの編集者も、もちろんいます。それに制作期間は長ければいいというものでもなく、旬の話題の本を旬のうちに急いで出すことがクオリティにつながる場合もありますよね。つまりはケースバイケースですが、編集している本の内容にふさわしい時間をかけられる環境では、新しい挑戦もしやすいと思います。
(3)作業環境が充実している
児童書編集者の机は散らかりがちです。ラフを切り貼りしたり、サムネイルを並べて一覧したり、初校を原寸に切って製本してみたり……。児童書にはアナログ作業が多いので、作業スペースが広いに越したことはありません。
ダイヤモンド社に入社したとき、机がとても広くてテンションが上がりました。いくらなんでも散らかしすぎですが、サンプルとしてわたしの机をご覧ください。
編集部内には自由に使える大きい机もあるので、こちらでもゲラ広げ放題。眠くなったときはスタンディングデスクが便利です。
最近では、リモートワークが増えたためアナログ作業のデジタル化も課題です。わたしの場合、iPadを導入したことによりイラストやゲラの戻しの効率がものすごく上がったのですが、これも会社に申請して支給してもらいました。画面が大きくないと役に立たないので、どうしても高いモデルが必要で、支給してもらえるのは助かりました。
さらにイラストデータはPhotoshopやIllustratorで納品されるため、Adobeのサブスクリプションも会社経由で契約しています。これが非常に便利で、自宅でもイラストデータをきちんと確認できるし、データ変換などもすぐできるようになりました。このように、児童書ならではの作業にもけっこう柔軟に対応がなされていると思います。
(4)同僚や上司が、本を良くするヒントをくれる
ダイヤモンド社には、じつはビジネス書だけでなく実用書や自然科学書など幅広いジャンルの編集者がいます。ベストセラーを出した実績のある編集者もたくさんいますが、「売れてこそ正義!」みたいな雰囲気はなくて、どちらかというと編集オタクみたいな人ばかり。
編集部には「2色刷りの青い特色、微妙に違う3色のうち、どれが一番読者に合うだろう……」と細部までこだわって悩み続ける人や「この索引を実装したらすごく大変だけど……でもあった方が絶対に便利だよね……!」と異常に手が込んだ索引を作り上げる人などが揃っていて、その仕事ぶりを見るだけでも勉強になります。
編集オタクは純粋に編集の話が大好きなので、相談にも乗り気です。児童書ってけっこう定番の型みたいなものがあって、無意識にその型にはまってしまっていることがあります。だから、別ジャンルの編集者視点のコメントにハッとさせられ、新しい気付きを得ることもしばしば。
さらに、編集オタクは褒めるのも上手です。わたしは上司に新しい企画を相談して、頭ごなしに否定された記憶が一切ありません。どんなに微妙な企画でも、必ずダメ出しするより先に面白いポイントを見つけてくれます。じつはこれってけっこうすごいことだと思います。ダメ出しするより、面白さを見つけて言語化する方が、何倍も難しいからです。
(5)資材の知識がすごい人がいる
児童書の造本設計は悩ましいものです。子どもたちがお小遣いで買ってくれるものなので、どんなに採算が厳しくても、なるべくお値打ち価格で届けたい……! 葛藤を抱える児童書編集者はわたしだけではないはずです。
そんなときに味方になってくれるのが、製作の仕事を担う「ダイヤモンド・グラフィック社」です。印刷所や製本所とのやりとりはもちろん「どうすればもっと印刷がキレイにできるか」「もっと効率の良い取り都合にできないか」といった相談にも乗ってくれる、頼れる存在です。
たとえば『東大教授がおしえる やばい日本史』は、192ページでオール4色という設計です。ある程度ボリュームが出したかったのでページ数はこれくらい欲しいし、絵を楽しんで欲しいからオール4色も譲れない。でも、印刷コストが高額すぎて、企画当初は希望していた本体価格1000円には到底収まらない見積でした。妥当なラインは本体価格1200円でしたが、どうにか1000円にしたく、しかし自分では妙案が浮かばず困り果てていました。
そんなとき、クオリティを保ちつつ最大限にコストを抑えた仕様を提案してくれたのが、グラフィック社の担当者でした。判型や造本の仕様を工夫して、コストダウンできる方法を見つけてくれたのです。その仕様に合わせてデザイナーさんが腕をふるい、1000円とは思えない豪華な本に仕上がったときの感動は忘れられません。
『やばい日本史』シリーズは68万部のヒット作になりましたが、それは彼らのような縁の下の力持ちのおかげでもあります。
(6)児童書を全力で売ってくれる
ここまでずっと編集過程の話をしてきましたが、言うまでもなく本の主戦場は書店です。どんな本も、書店さんがあってこそ、読者の元に届けることができます。そこで、その書店さんに本を送り出す営業部についても書きたいと思います。
ダイヤモンド社に入って驚いたのが、営業部の人が月曜の朝イチに前週配本の新刊の売れ行きをものすごく詳細に分析すること。取れる限りのデータをまとめて、1週間の動向を把握、売れ行きのいいものはすぐに重版検討に入ります。とてもロジカルでシステマティックな仕組みができているので、売れ行き好調書を「売り逃す」ことはほぼありません。
新しいジャンルについても協力的で、「その棚の担当さん、知らないし……」なんて言われたことはありません。わたしの入社を機に児童書を刊行しはじめることになったときも、事前にリサーチして準備してくれました。
そして、初速が出た瞬間、編集者がドキドキするくらい大胆に重版します。『わけあって絶滅しました。』を発売4日で10万部重版すると聞いたときは、腰が抜けました。でも、全力で刷ったぶん、広告と店頭を連動させながら全力で売ってくれるのでご安心を。実際、『わけあって~』はいろんな人の尽力により、その後も版を重ねてシリーズ85万部に到達しました。たくさんの部数を売ることだけが正義とは思いませんが、たくさんの読者の元に本が届くのは嬉しいことです。
そして児童書の場合、長期の売り伸ばしも欠かせません。制作期間が長いぶん、ロングセラーにしなければ、かけた労力が報われないからです。その点、前述した『わけあって絶滅しました。』や『やばい日本史』などのシリーズ本は、発刊から4年たった今でも新しい販促企画を組んで売り上げを伸ばし続けてくれていて、とても心強いです。
ライセンス事業やコラボイベントなどにも積極的で、『わけあって絶滅しました。』では、宣伝プロモーション部の尽力によりバスボールなどのグッズ展開や『マンモス展』とのコラボなど、新しい取り組みも実現できました。今年の7月には大阪でシリーズ初の大型展示となる『わけあって絶滅しました。展』も開催予定です。こうして仕事が広がっていくのも、楽しいことのひとつですね。
つぎつぎにコンテンツを消費していくのは疲れてしまうので、1つのコンテンツを大切に育てていけるのはいいものだなあ、と思っています。
(7)児童書以外も編集できる
ここまで「児童書、児童書」と連呼してきましたが、わたしは児童書以外も編集しています。そのときどきで興味があることを企画にしているので、対象読者は企画次第。だから企画によっては大人向けの本もつくります。
ダイヤモンド社には「児童書編集部」があるわけではないので、担当する企画に制限がありません。ですから、児童書編集をやっているけど、じつはほかのジャンルにも興味がある……という方にとっても、挑戦しがいのある環境だと思います。
ダイヤモンド社に興味が出てきたみなさんへ
さて、ここまで長い文章を読んでくださってありがとうございます。これは採用の告知記事なので、最後に改めて求人情報について書いておきますね。
詳しい募集要項はダイヤモンド社の採用情報ページおよび「マイナビ転職」をご覧ください。応募〆切は「2022年6月6日(月)」です。
この記事をお読みいただいて、応募に対して前向きになった方は、ぜひご検討ください! 版元の方、編集プロダクションの方、フリーの方……などなど、みなさんのご応募をお待ちしています。
募集にあたっては、ほかにも書籍編集者のインタビュー記事や座談会記事が公開されていますので、併せてお読みください。
(終わり)