ダイヤモンド社の書籍編集局では、いま中途採用で編集者を募集しています(詳しい募集要項はダイヤモンド社の採用情報ページおよび「マイナビ転職」をご覧ください)。
そこで、現場の編集者たちに、職場の雰囲気、仕事内容、一緒に働きたい人物像などについてインタビューしました。ホンネ炸裂のトークをお読みいただき、我こそは!と思われた編集者の皆さまは、ぜひともご応募ください。応募〆切は「2022年6月6日(月)」です。
本記事では、新テイストのビジネスパーソン向け教養書を開拓した編集者・畑下裕貴が、ダイヤモンド社に入って驚いた企画会議のエピソードなどをご紹介します。
(→他メンバーのインタビュー記事および座談会記事も是非お読み下さい!)
編集会議では
年間150本の企画を検討
畑下裕貴(はたした・ゆうき)
大学卒業後、出版社2社を経て2016年入社(入社時29歳)。主な担当書籍に『あやうく一生懸命生きるところだった』『サイコロジー・オブ・マネー』『DIE WITH ZERO』『世界のビジネスエリートが身につける教養「西洋美術史」』『世界のビジネスエリートが身につける 教養としてのワイン』等。
──畑下さんは2016年5月入社ですね。
畑下裕貴(以下、畑下) はい、入社して6年くらい経ちました。
──当時、どういうきっかけで転職しようと考えたんですか?
畑下 その頃、前職で10万部弱くらいのヒットが出せて、でもなんとなく自分のなかで編集スキルが伸び悩んでいる感じがしていたんです。書籍編集の仕事自体は面白くなってきたけど、だからこそ自分のスキルが物足りなくなってきた。そんなとき、ちょうどダイヤモンド社の求人を知ったんです。たしか、フェイスブックで情報が流れてきて。で、ここに行ったら自分も成長できるかなと。
──なぜそう思ったんですか?
畑下 いわゆるスター編集者がいっぱい集まっていたので、そのなかで切磋琢磨できるといいなと。自分もそこに身を置けば、何者かになれるんじゃないかという期待がありました。
──実際に入社したら、期待と違ったみたいなことはなかったですか?
畑下 いや、それはないです(笑)。ただ、企画会議が前職とまったく違う形だったのには驚きました。ダイヤモンド社では、編集部全員で提出された企画を検討します。同僚の企画も自分事として徹底して真剣に考える。すごく斬新だなと思いました。自分事で考えるとなれば、結局自分の企画をやっているのと一緒じゃないですか。それを毎週やるわけだから、たぶん年間で100本から150本くらい真剣に企画を考える。そりゃ鍛えられますよね。
──最初は、他者の企画に意見を言うのって勇気が要りませんでしたか?
畑下 最初はあんまり言いたくないと思いました(笑)。やっぱりその人がいいと思って出している以上、根底から覆すようなことを言うといい気分はしないだろうと。人間関係的にもどうなんだろうとか。でも、そんなことより、皆が企画をより良くする方向に意識が向いていることが分かってきたので、徐々に気にならなくなりましたね。
──他にも驚いたことはありますか?
畑下 これは編集部やデスクによって異なると思うんですが、僕の上司はゲラをすごく読んでくれるんです。そこでのやり取りが新鮮なんです。何と言うか、ゲラを通して対話をするような(笑)。色々なコメントを書き込んで下さるんですけど、「え?」みたいに感じることもあれば、「あ、なるほど!」と思うときもある。ロジカルなことも感覚的なこともあって非常に参考になりますね。担当者である自分はもう読み過ぎているので、初見だとそういう視点もあるのかという気づきもありますし。
──面白いですね。そういうなかで自分の編集スキルが上がったという感覚はありますか?
畑下 ダイヤモンド社に入って成長した点は、企画力と原稿の質の見極めだと認識しています。企画力は、さっき言ったように企画会議であれだけ検討数をこなしてきた結果だと思います。原稿の質については、上司とのゲラ対話のなかで学びました。とくに著者に対する見方が変わったのが大きいかなと。
──そのあたりもう少し詳しく教えてもらえますか?
畑下 僕は企画を立てるとき、テーマから入るタイプなので、後から著者を探すことが多いんです。そのテーマを書ける人はたくさんいても、深く書ける人、あるいは数字を持っている人、魅力的なエピソードを持っている人をちゃんと見極めることがすごく大切だと上司から学びました。そこを押さえれば明らかに原稿もよくなる。つまり、その人じゃなきゃ書けないという人を探すのが大事であると。そこに気づいてつくったのが『世界のビジネスエリートが身につける 教養としてのワイン』だったんです。
──7万部のベストセラーですね。
畑下 ワインの本っていろいろな人が書けますよね。ソムリエはもちろん、ワイン屋さんやワイン好き芸能人だって書ける。でも、この企画のテーマでエピソードを持っている人ということだと、この渡辺順子さんしかいなかったと思うんです。実際に欧米でワインのビジネスに深く関わってきて、ソムリエも知らないようなワインの裏側のエピソードを知っている。それが内容を充実させ、原稿の質につながったと思っています。
同僚たちとの
濃密な編集談義
──畑下さんは、書籍編集局の若手たちとアイデア・ランチをやっているんですよね?
畑下 はい、コロナ禍になってからは開催が難しくなりましたが、以前は、毎週1回、お昼にやっていました。参加者全員が企画のアイデアを5本ずつ持ち寄るんです。タイトルだけとか、簡単な思いつきレベルの内容だけですけど。僕も誘われて参加しはじめましたが、企画を考えるうえでとても参考になりました。5本挙げた後に参加者全員に一つ選んでもらうんですが、僕が一番面白いと思っているアイデアが意外にウケなくて、全然別の案が人気だったりします。
──全員の意見がバラバラになることもありますか?
畑下 ありますね。そういう場合は出したアイデアが全部微妙なんじゃないかと(笑)。いいアイデアであればみんな「それがいい」って揃いますし。基本的にダメ出しはしないんです。いい企画を取り上げてもらう。ダメなアイデアには誰も触れないから逆に分かる(笑)。
──そこから実際に企画になったケースも多いですか?
畑下 はい、たくさんあります。7万部超となった『教養としてのワイン』も、その場で聞いた意見を参考にしています。『世界一シンプルな外国語勉強法』もそうですね。『高いワイン』もワイン本の第2弾としてどう思うか、その場で確かめさせてもらいました。他の人がどういう視点でどこを面白いと思うかがわかりますし、自分の知らない著者の情報も聞けるのでとても勉強になりました。
──それを皆が自発的にやっているのが素敵ですよね。
畑下 みんな編集が好きなんだと思います。たとえば、用紙一つ取っても語り始めたら止まらないですし。「この本文用紙はこうで、こっちはクリーム系だから、この本なら絶対これが向いてますよね」といった話が普通にできる。「はぁ、何それ?」みたいな人はいません。そこで編集談議ができるんです。
──用紙の話が出ましたが、資材や加工の自由度についてはどう感じていますか?
畑下 用紙の選択もカバー箔などの加工も、基本的に編集者に判断が任されていて、とても自由ですよね。制作面は、局内の書籍制作部と関連会社であるダイヤモンド・グラフィック社(GRA社)が編集者の意向に沿って相談に乗ってくれます。悩んだときも前向きな提案をしてくれますし。GRA社は同じビル内にいるので連絡すれば数分で来てくれます。本当に恵まれた環境だと思います。
新しい何かを探してきて
読者や市場に提案する楽しさ
──畑下さんは、読者対象はビジネスパーソンだけどビジネス書ではないといった感じのヒット作が多いですよね。そのあたりの企画の狙いについて教えてもらえますか?
畑下 そういう本は『世界のビジネスエリートが身につける教養「西洋美術史」』からなんですけど、実は単純に美術史を知りたい人って多いんじゃないかというところからスタートしています。でもわざわざ書店で美術書の棚にまでは探しには行かないような人ですね。であれば、自己啓発やビジネス教養の枠で出せば手に取ってくれるのではと仮説を立てたんです。その仮説が当たったから、じゃあ次はワインも行けるはずだよねと。つまり、ビジネスパーソンが何となく憧れを抱いていて、ちょっと学びたいという潜在意識を持つジャンルであれば読者はけっこういるのかなと。積極的に買おうというより、書店で見かけて自分が欲していることに気づくようなジャンルです。
──それで『西洋美術史』は5万6000部、『ワイン』は7万部ですから凄い。でも、畑下さん自身はお酒を飲まないんですよね?
畑下 飲まないです。だから個人としてはワインにあまり興味はなかったんです(笑)。美術についても同様でそれほど興味はなかったんですが、なんとなく美術館に足を運ぶことは稀にあって。でも絵の見方がわからず、何が面白いかもよくわからずに帰ってくる。そういう人って結構いるんじゃないかとふと思ったんです。話題になっているから観に行ったけど、何がすごいか説明できないし、楽しみ方もわからないみたいな。であれば、そこにニーズがあるんじゃないかと。
──面白いですね。今回の中途採用募集では他にも編集者へのインタビュー記事を用意したんですが、中には企画はすべて「自分起点」で立てると断言している人がいます。つまり自分の興味関心から発想するわけで、畑下さんとは真逆かもしれません。
畑下 たぶん性格もあると思うんですけど(笑)、ただ僕が書籍編集の仕事をしたかった理由のひとつは、「これ面白いでしょ?」って世間に提案して、それが認められるのが快感だからなんですよ。自分のためにつくるというよりは、新しい何かを探してきて読者や市場に提案したいという気持ちが強い。バイヤーみたいな感じですね。で、当たると「よっしゃ!」と(笑)。
──わかります(笑)。そういった色々な編集者がいて、それぞれ実績を挙げているのもダイヤモンド社の強みですよね。
建設的な議論ができる人に
来て欲しい!
──応募を考えている人は気になると思うんですけど、ダイヤモンド社って企画は通りやすいと思いますか? 企画会議での検討の様子は冒頭でも伺いましたが。
畑下 企画は通りやすいと思います。企画会議に行き着くまでに個々の編集者がしっかり考えていますから。たぶん編集部の会議に出す前段階で自ら企画を中止するケースも結構あるはずです。僕もデスクとの話し合いの時点でやめた企画はめちゃくちゃありますし。そういう意味で精査されているから、会議には通りやすいのかなと。
──畑下さんは、企画会議ですぐに通らなかった場合も、必ず出し直しますよね。何回でも諦めずにチャレンジする。
畑下 そうですね。企画会議に上げた段階のものは僕のなかではちゃんと売れるだろうと思っているので、自分が納得いくまで引きたくないという気持ちはあります。もちろん会議で出された意見は参考にして、変えるべき点があれば変えて再チャレンジしますね。
──そういうやり取りは大変じゃないですか?
畑下 結構イラっとするときもありますよ(笑)。でも冷静に考えると納得できることも多いですし、企画の議論って編集談議なので、先ほど言ったようにみんな好きだし、僕も好きなのでまったくストレスはないですね。建設的にちゃんと議論ができるからすごく幸せだと思います。
──たしかに感情的な話にはならないですしね。
畑下 好き嫌いで判断してはじくとか、根回しが必要とか、そういうことがない。各自が平等な立場で意見を出し合って建設的に話せます。これは普通のことのようで実はとても貴重なのだと思います。いい本、売れる本をつくろうということで、みんなが一緒の方向を向いているんですよね。
だから、今回の募集でもそういう建設的な議論をするのが好きな人に来てほしいですね。企画が通らないと「何だよ」って投げやりになっちゃう人はうちには向いていないかもしれません。あとは、先ほども言ったように紙の質とかを話せる人、濃密な編集談議ができる人を待っています(笑)。
(終わり)
※具体的な募集要項はダイヤモンド社の採用情報ページをご覧ください。また「マイナビ転職」にも詳しい情報が掲載されています。
※本記事以外にも、書籍編集部メンバーのインタビュー記事や座談会記事がお読み頂けます(記事一覧はこちら)。いずれも、職場の雰囲気や仕事内容を本音炸裂で語っています!