バイデンのコロナ政策がトランプよりも
常に「科学的で正しい」わけではない
――COVID-19へのアプローチにおけるアメリカ国内の議論についてはどうみていますか。
マンスキー 二つのグループによる対立が起きており、まさしく「正反対の確実性」が絡んでいます。
昨年十月、マーティン・クールドルフ博士(ハーバード大学医学部教授)らが「Great Barrington Declaration(グレートバリントン宣言)」を発表しました。その内容は、重症化リスクの高い人に「集中的保護(Focused Protection)」を講ずる一方で、ロックダウンによる社会的損害を考慮して、重症化リスクの低い人には通常どおりの社会活動を推奨するものです。集団免疫の形成をめざす方針であり、トランプ政権のコロナ対策を基本的に支持しています。
ところが、公衆衛生に携わる多くの人は「グレートバリントン宣言」を批判し、代わりに「ジョン・スノーメモランダム(John Snow Memorandum)」を支持しています。ジョン・スノーとは、1850年代にロンドンでコレラを発見した医師です。このメモランダムの支持者は、COVID-19に感染すればたとえ若い人でも重症化するケースがある点、集団免疫が確立する証拠はない点を指摘しました。
両者の見解は、それぞれがトランプとバイデンの方針とも重なります。トランプは自分で何を話しているのかわかっていないでしょうが、それはそれでいい。バイデンは、トランプとはまったく異なる見解をもつアドバイザーに意見を聞いていますが、それも構わない。これは政治的な問題にほかならないからです。
バイデンが自らの政策を「科学に基づく」と発言しても、それはどの科学かによります。必ずしも、バイデンのアプローチがトランプより「科学的で正しい」とは限りません。