パク・ウンジ
自分で選んだ好きなことで平凡な日常を満たしたい著述家。大きな犬と3匹のネコと一緒に住んでいる。著書に『自分で決めます』『野良猫のほうが幸せだろうか』『なぜならネコだからさ』『ある日ネコが大好きになった』『あしながおじさん、本当のしあわせはいまを生きること』(以上は未邦訳)、『フェミニストってわけじゃないけど、どこか感じる違和感について』(ダイヤモンド社)などがある。

吉原育子
新潟市生まれ。埼玉大学教育学部音楽専攻卒業。成均館大学などで韓国語を学ぶ。韓国文学翻訳院短期集中課程修了。主な訳書に、ファン・ヨンミ『チェリーシュリンプ わたしは、わたし』、キム・ソンジン『お母さん取扱説明書』(ともに金の星社)、パク・ミンギュ『亡き王女のためのパヴァーヌ』(クオン)、ユ・インギョン『明日も出勤する娘へ』、ムン・ヒョンジン『サムスン式 仕事の流儀』(ともにサンマーク出版)、カン・ソジェ『私は男より預金通帳が好き』(草思社)などがある。

「無意識のうちに囚われていること」に気づく
──訳者より

 本書の著者、パク・ウンジ氏は、27歳で結婚し、結婚6年目の夫と猫3匹、ラブラドールレトリバーと暮らすフリーライターだ。

 妻、嫁、女という与えられた枠に沿って生きることに違和感を覚える著者は、家事分担や日本でいう盆正月の帰省など、結婚生活に付きものの問題にぶつかるたび、夫や両家の親に自分の意思を伝え、新たなルールや生活をつくることで、そのくびきから解放されようとする。

 なかでも、義父にはっきりと物申す著者の姿は印象的だ。だが「私を苦しめたのは(中略)私自身のなかから湧いてくる義務感だった」と告白しているように、つねにうしろめたさがつきまとうなかでの選択だ。それに対する両家の親のリアクションは、いまの一般的な親世代の姿を象徴している。

 女性が出合う困難を描いて韓国でセンセーションを起こし、日本でも大きな話題となった『82年生まれ、キム・ジヨン』(チョ・ナムジュ著、斎藤真理子訳、筑摩書房)の主人公ジヨンは、社会から抑圧されつづけたことで精神的にバランスを崩してしまったが、本書の著者は、そんなジヨンのようにあるべき自分と乖離してしまわないために、さらにはこれからの世代のために、口にしにくい思いを粘り強く言葉にしつづける。

 本書は、自分の中の意識化できていない部分、無意識のうちに囚われてしまっている数々の呪縛に気づかせてくれる。女性も男性も、いまの世界について、自分の人生について、多くの発見を得られるだろう。

 フェミニズムはどうも苦手……と感じている人も、この本で取り上げられているような、日常で感じる小さな違和感を入口に、ちょっとだけフェミニズムに近づいてみてほしい。ただ自分らしく生きる自由を求めているだけの、若い女性の等身大のフェミニズムがきっと見えてくるはずだ。


■新刊のご案内

★西加奈子氏「違和感を大切にすることは、自分を大切にすることだ」
★『82年生まれ、キム・ジヨン』を生んだ韓国発、「これからの世代」の必読書!

仕事、家事、結婚、社会……「気にしすぎかな」とずっと自分に言い聞かせてきたけど、いつまでも引っかかるこの感覚はなんだろう? モヤモヤとし続けている目の前の問題を整理して、ちゃんと考えられるようになる大切な1冊。ついに日本上陸!

■目次

プロローグ──ネコに仕える物書き、または物を書くフェミニスト

■第1部:あなたと話してると、私は大げさな女になってしまう
──どこか言いにくい違和感について

「フェミニストってわけじゃないんだけど……」と言う理由
その冗談、私は笑えない
男性が男性のためにつくった社会
なんとなく使っている言葉
おばさんと呼ばれるのがいやな理由
「女の敵は女」という思い込み

■第2部:私の彼は一般的な男の人
──なぜかなかなか通じないけど話したいこと

「痩せたみたいですね」って?
「女はいいよな」という相手と会話する
「男は子ども」というフリーパス
そんな責任、感じなくていいんだよ
文明社会の「ジャングル」のような部分
私は「最近おかしくなった」人ではない

■第3部:ええ、私は大げさな女です
──ぶつかるのは大変ですが言うことにします

結婚にも「取捨選択」が必要だ
「家事は半々」がむずかしい
本当はそんな「義務」はないのに
夫はソファに直行し、妻はすぐさま台所へ
「名誉もないリーダー」になりたい人はいない
いちばん結婚してはいけない相手?
「理性の糸」が切れる音
親になるなら、こんな親になりたい

エピローグ──他人のすべてを理解できるわけではないけれど