大規模修繕管理会社は管理委託費だけで利益を得ているわけではない。大規模修繕工事をはじめとするマンションの修繕工事も、管理会社の大きな収入源となっている Photo:PIXTA

マンション管理組合の支出の中で、もっとも大きな割合を占めるのが管理会社に支払う管理委託費だ。管理組合としては、管理会社にはできるだけ安い管理委託費で、質の良い管理をしてもらいたいところだが、最低賃金引き上げの流れを受け、管理会社が管理委託費の値上げを要求するケースが増えている。必要な値上げは受け入れつつも、管理会社の“食い物”にされないための対処方法について考えてみたい。(株式会社シーアイピー代表取締役・一級建築士 須藤桂一)

デベ系だけでなく独立系の管理会社も
値上げを要求するように

 管理会社による管理委託費の値上げ問題に関して、2019年1月24日に「マンション管理組合は管理会社の『委託費便乗値上げ』に対抗できるか」と題して記事を書いた。それから2年以上が経過したが、現在はどのような動向になっているか見ていこう。

 まず、最低賃金の現状はどうなっているだろうか。近年の東京都における最低賃金について推移を見てみると、

 2015年:907円
 2016年:932円(+25円)
 2017年:958円(+26円)
 2018年:985円(+27円)
 2019年:1013円(+28円)
 2020年:1013円(+0円)

 となっている。20年が前年から据え置きなのは、新型コロナウイルスによる景気低迷が影響しているためだ。上昇傾向にあった最低賃金も一段落という印象ではあるが、コロナ問題が収束したのちにはまた上昇トレンドに向かうと考えられる。

 前述した19年の記事の時点では、デベロッパー系の管理会社が管理委託費の値上げを要求するケースが多く見られた。しかし、最近では独立系の管理会社も値上げを申し入れるケースが増えているうえ、以前にも増して強気の値上げ要求が目につくようになっている。中には、いきなり契約解除を通告してくる管理会社も少なくない。