自分の心を客観視できる

 例えば、無性にイライラする時や気が散りやすい時に、その理由として考えられることを可能な限り書き連ねてみる。できあがったメモを読むと、自分の心や思考回路を外部から客観視できるので、感情が乱れてしまう根本的な原因が見えてくる。
 
 原因がわかれば、対処法を考えられる。イライラする理由が親しい友達と久しく話せていないことだとわかれば、スマートフォンで連絡してみればいい。気が散りやすいのは睡眠不足のせいだと突き止められれば、生活習慣を見直すきっかけになるだろう。

 これを繰り返していくと、自分の感情の傾向が把握できるので、むやみにストレスをためて感情的にならずに済み、冷静に物事に対応できるようになる。SNSでも、「本当に頭がスッキリする」「すぐ実践できるからおすすめ」などと「メモ書き」に対する称賛の声が相次いでいる。

1カ月継続すると次々と言葉が湧いてくる

 初めのうちは「言葉なんて浮かばない」「何を書けばいいのかわからない」と苦労するかもしれない。「1分間に1枚」というルールも、とうてい不可能に感じるだろう。

 しかし、「メモ書き」を1カ月続けると、脳内に渦巻くモヤモヤとした気持ちを、自然に言語化できるようになる。「きちんとした文章にする」といった無意識の制限さえ外れれば楽になる。メモに書くよりも先に言葉が湧いてくるようになるので、アウトプットが止まらなくなるのだ。

現場での実践から心理学者と同じ結論にたどり着いた

書く」ことの効能は学術的にも裏付けられている。米国の社会心理学者ジェームズ・W・ペネベイカーによると、他者に見せることを前提とせずに、自分の心のありのままを書くことによって、心身の健康が改善されるという研究例が数多く出ている。

 また、同国の心理学者ソニア・リュボミアスキーの研究でも、ネガティブな経験を心の中だけに留めずに文字に書き出すと、心身が健康になり、人生の満足度が高まることが報告されている。

 著者の赤羽氏が、こうした研究を知っていたわけではないという。しかし、ビジネスの現場で何千もの人を対象に試行錯誤を重ね続けた結果、心理学者と同じ結論にたどり着いたのだ。

「メモ書き」はあらゆることに応用できる万能メソッド

メモ書き」を習慣にできれば、感情が整理されて心的ストレスをためこまなくなる。また、「メモ書き」は小手先のテクニックではなく、思考そのものを迅速かつクリアにするため、日常生活の悩みから仕事の懸念事項まで様々な不安やストレスの解消に役立てることができる。

 まさに、「メモ書き」はストレスの多い現代人に必須のメソッドであり、誰にでも実践できる敷居の低さと様々な場面に応用できる万能性を持ち合わせている。だからこそ、発売から7年が経過した今でも、『ゼロ秒思考』が多くの人々に読まれ続けているのではないだろうか。

 第2回以降の連載では、今回紹介した「メモ書き」の具体的なフォーマットや、ノートやメモ用紙ではなく、あえて「A4用紙の裏紙」を使う理由について解説する。

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