保線部門に比べて
機械化が遅れた電気部門

 JR西日本では2021年度中に1台導入し、京阪神・岡山・広島エリアの在来線で運用を開始。同社が交換する年間2000基のブラケットのうち、約3分の1の交換を担う予定だ。

 JR西日本に限った話ではないが、これまで鉄道の保守作業の機械化というと、レールを研磨して形状を整えるレール削正車や、レールのゆがみを矯正するために砂利を突き固めるマルチプルタイタンパーなど、保線部門が中心であった。保線で機械化が先行したのは、こうした作業は人海戦術で行う必要があるため、機械化のメリットが大きかったからだ。

 一方、電気部門にも架線やケーブルの張り替え、電柱やブラケットの交換などの工事はあるが、工務部門と比べると規模が小さいため、機械化が遅れていたのが実情だ。しかし、こうした工事は重量物の運搬や高所での作業が多く、危険と隣り合わせのため、鉄道固有の技術や経験が必要で、人員の確保も難しくなってきた。

 そんな中、JR西日本は2018年度に策定した現在の中期経営計画の中で、労働人口減少を見据えた鉄道オペレーションの生産性向上を最重要課題に設定。これを受けて電気部門でも、グループ会社で電気工事を担当する西日本電気システムと共同で、2018年度にブラケットハンドリング車の開発に着手した。

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 JR西日本は2017年にも油圧アームで電柱をつかんで設置、撤去を行う「電柱ハンドリング車」を導入しており、ブラケットハンドリング車はこれに続く電気工事の機械化の第2弾という位置付けだ。木村氏は今後も「人手がかかり、労働的に負荷の大きい作業から機械化できないかということを引き続き考えていきます」と語る。

 もう一つ期待されるのが、他社への拡大だ。規模の小さい電気工事の機械化は単独では費用がかさんで難しいのが実情だが、こうした技術を他社でも広く使うことができるようになれば、業界全体の生産性向上が図られる。

 木村氏は「基本的には同じような設備を使っている会社は多いので、他社での使用も可能ではないか」とした上で、「各社が開発しているさまざまな技術を参考にしたり、使わせてもらったりして、鉄道業界全体で省力化が図られていけばいいと思っています」と語った。

 いや応なく訪れる労働人口減少時代を生き延びるため、鉄道業界の一丸となった対応を期待したい。