分倍河原のカフェでキャプテンに指名

――エディーさんは廣瀬さんをキャプテンに指名しました。キャプテンとして廣瀬さんにどんなことを期待したと思いますか?

廣瀬 彼から直接、「こんなことを期待している」って言われたわけではなかったんですけど、「ここからはチームとして上にあがっていくだけだから」というような話がありました。それまでなかなか結果を出せずにいたので、失うものはもうこれ以上ない、だから上にあがっていくだけのチームを一緒に作っていきたいって。これは後から聞いたことなんですが、「ベースを作れる」ってことを期待して、僕をキャプテンにしたそうです。

――ご著書『なんのために勝つのか。』で、廣瀬さんがエディーさんと最初に話をしたのが分倍河原のカフェだったというシーンがあります。

廣瀬 2012年3月のシーズンが終わったか、終わるくらいのころの東芝も負けた後で、「そろそろ日本選手権の決勝戦ですね」みたいなカジュアルな会話の中で、「キャプテンをお願いしようと思ってる、まずは1年間キャプテンとして」っていうお話をいただきました。すごく光栄です、頑張りますって。

 それが分倍河原のタリーズだったんです(笑)。通訳の人と3人で話してたんですけど、だれもそんな場所でキャプテン就任が決まったとは思わないですよね。

 その後も府中のオムライス屋さんでランチしながらミーティングしたり、スタバでミーティングとか結構あったんですけど、僕がキャプテンを降ろされるときは、協会に来てくれって言われたんです。通訳の人に「今回は違うんですね」って言ったら、ちょっと人事のことですって。そのときは「あ~そういうことなんだな」と覚悟して行きましたね。

――そのとき、エディーさんはちょっとよそよそしくて、いつもの快活さがなかったそうですね

廣瀬 たとえばワールドカップのメンバーに入れないとか、試合に出場できないとか、そういったことを選手に伝える瞬間って、辛いんじゃないかな。思いもありますし、仲間でもありますし。僕をキャプテンから外すときも、いままで一生懸命やってきた人にダメって言わなくてはならないのは、きつかったんじゃないかなと思います。

独特すぎる「リーダーシップ」の見極め方

――エディーさんは、リーダーシップを発揮できる人物を見極めるために、かなり独特なやり方をしていたことを本で明らかにしていますが、とにかく選手をよく見ている方ですよね。

廣瀬 イングランド代表のキャプテンにディラン・ハートリーを指名した際のエピソードが本にもありますが、ホテルでミーティングをしたときに、ハートリーが従業員の方と何気ない会話を楽しんでいるところを見て好感を持ち、彼こそキャプテンだと確信するんです。そういうときにどんな振る舞いをするかっていうのが大事だったりする。

 たとえばエディーさんは食事のとき、みんなが通る場所に座って、毎日「元気?」とか声をかけてきました。僕は体が硬いんでロボットみたい、東芝に勤めていて体が硬いから、「東芝ロボット、グッドモーニング」なんて声をかけながら、僕のコンディションを見ている。GPSのデータや体重、体内の水分量、あとはワンタップっていう体調管理システムの情報も踏まえて、選手のコンディションを見抜いていて、その人に合わせたトレーニング量を提案してくるんです。とにかく観察力、洞察力がある人でした。

――数字や映像を使って、選手それぞれが個別にどうすればいいのかを具体的に説明してくれるから、納得して練習に取り組めた?

廣瀬 メンタル面も含めて、一人ひとりの課題や、それぞれのいいところって違うので、タフに言ったほうが頑張れる人もいますし、あまりキツく言い過ぎないほうがいい人もいるので、「この人にはどれぐらい負荷をかければいいのか」というところまで見ている。どんな人かわからないときは、ちょっと試しに強めにガツンと言ってみて、どんな反応をするのかを見たり、そんなことをいろいろとやられる方でした。