「出口の入口」かつ「世界史の入口」
百々:出口さんが時代の空気感を大切にしていることは、本を読んでいるとひしひし伝わってきます。『哲学と宗教全史』も出口さんの言葉で教えてもらえるから、一緒に想像しながら「確かにそういうことがあるんだ」と気づかされ、哲学と宗教が世界史を背骨に立体的に見えてくるのだと思います。
出口:信長や秀吉や家康のような個性がなぜ生まれたかも同じです。
当時、日本で銀が山ほど採れたので世界中から人がやってきて、社会全体がワクワクドキドキしていたからです。
もし銀がなければ誰もやってこないので、あんな華やかな時代はなかったかもしれない。
極端にいえば、日本に山ほど銀があるからこそ、倭寇の統領だった王直(おうちょく、生年不詳~1560)が「あいつらは金持ちだから絶対売れる!」と、ポルトガル人を船に乗せて種子島に鉄砲を持ち込んだ。そういった時代背景を見ずに、ああいう個性が生まれたとは理解できません。
百々:そこがものすごく斬新ですし、教科書に出てこない表現で理解できるので、世界史に深みが加わるのですね。
『哲学と宗教全史』は分厚いですが、単に情報量が多いのではなく、読んだ後にスッと腹に落ちてくるものを非常に多く感じます。だから、もっと知りたくなる。
巷に世界史の入門書はたくさんあり、売れ続けていますが、それだけでわかったつもりにさせないのが出口さんの真骨頂。いや、『哲学と宗教全史』を読むと、哲学と宗教だけではなく世界史の深みに触れざるをえないので、この本を読んだ後に世界史の入門書を読むことを強くお薦めします。逆はどうかと思うのですが。「出口の入口」でもあり、「世界史の入口」としても最適ではないでしょうか。
(ps.出口学長より)過去の僕の『哲学と宗教全史』全連載は「連載バックナンバー」にありますので、ぜひご覧いただき、楽しんでいただけたらと思います。
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