ガンダムPhoto:Barcroft Media/gettyimages

4月に事業ユニットの改編を行い、新たな組織体制が始動したバンダイナムコグループ。足元では「機動戦士ガンダム」事業が絶好調の同社だが、このタイミングで組織体制の変革を行った狙いとは。大胆な組織改編の目的と、ガンダムを主軸とする世界戦略の全貌について、4月に就任した川口勝社長に聞いた。(ダイヤモンド編集部 山本 輝)

鬼滅の刃が成功体験に
縦割り組織の打破で価値最大化

――これまで5つあった事業ユニットを3ユニットに改編する新体制が4月から始まりました。大胆な組織改編の狙いは何ですか。

 もともとバンダイナムコグループの特徴は、エンターテインメントに特化しながら、玩具やゲーム、アミューズメント施設など、幅広い商品・サービスを手掛けているところにあります。そして各事業ユニットの中で、例えば玩具を展開するバンダイや、ゲームなどを企画するバンダイナムコエンターテインメントなどの事業会社が、それぞれの専門分野に特化してきました。言ってしまえば、各事業を寄せ集めた「足し算」でグループが成り立っていたわけです。

 ですが、IP(キャラクターなどの版権の総称)を取り巻く環境は近年激しく変化しています。中国や米国など海外を見据えると、われわれよりも企業規模が大きく、かつはるかにレベルの高い競合もおり、これまでのように各事業を単に並列させるだけでは企業価値を最大化できず、10年先も生き残ることはできません。

 事業会社間の連携をより深め、オールバンダイナムコで競争力を発揮できる体制にするために、ユニットの改編が必要不可欠だったのです。

 例えば、新しく誕生する「エンターテインメントユニット」は、従来のトイホビーユニットと、ゲームやアプリ事業などを担うネットワークエンターテインメントユニットを集約し、全体の売り上げの約8割を担う一大ユニットになりました。これによって、玩具というフィジカル(物体的)なものと、ゲームなどのバーチャルの両方が融合し、大きな相乗効果が期待できます。

 従来以上に各事業会社が専門性を極めてエッジを効かせるのと同時に、各社の連携を深めることでビジネスの拡大を図ります。

――これまでは各事業会社間の連携は不十分だったということでしょうか。

 そうですね。これはうちの長所でもあり短所でもあるんですが、各事業会社が自主独立していて“縦割り志向”が強かったのです。全体最適よりも個々の事業の利益を優先していた面が否めません。