チェンジリーダーの哲学#73Photo by Yoko Akiyoshi

ソニーの次世代ゲーム機、プレイステーション5が間もなく発売を迎える。ゲーム市場での前評判は上々だ。「プレイステーションの父」久夛良木健(くたらぎ・けん)氏が今振り返る、プレイステーションが成功した理由。そしてソニーがプレイステーションを生み出せた理由。(ダイヤモンド編集部副編集長 杉本りうこ)

プレステは「いい子」ではなく
「たくさん仲間がいる子」

――もうすぐプレイステーション5の発売です。買いますか?

 もらえるんじゃない?「お父さん」だもん。

――ソニーの吉田憲一郎会長兼社長と十時裕樹副社長から連名で、久夛良木さんのアセントロボティクスCEO(最高経営責任者)就任を祝うお花が届いていましたね。

 気持ちだけで十分だよって言ったんだけどね。

ソニーの吉田憲一郎会長兼社長らから届いた花久夛良木健氏のアセントロボティクスCEO(最高経営責任者)就任を祝って、ソニーの吉田憲一郎会長兼社長らから届いた花。「プレステの父」の新たな挑戦に、ソニーの経営陣もわくわくしているのだろうか。 Photo by Y.A.

――久夛良木さんにとっては、プレイステーションはどういうものですか。

 やっぱり子どもだね。もちろんかわいいんだけれど、なぜかわいいかと言うと「出来がいい子」だからじゃない。親がびっくりするほど遠くまで行って、いろんなお友達を作って、仲間を作っているから。

 僕がプレイステーションで創りたかったのは、コンピューター・エンタテインメントという新しいドメイン(領域)。それを創るには自分だけじゃなくて、仲間がそれぞれに盛り上げようとしてくれることが大事だった。誰が誰をつぶそうと考えるのではなくて、みんながそれぞれ何かしら、自分の得意なことをやっている。そういうのが僕はすごく好きなんだ。

 メディアはプレイステーションについてよく、対任天堂さん、対セガさんという構図を書き立てた。でも僕らは誰一人としてそんなことは考えていなかった。メディアはいつも競争構図が好きだよね!でも僕らにしてみれば、任天堂さんもセガさんも仲間だった。