市場がコロナ後に「インフレ加速はない」と見切る理由やその盲点Photo:PIXTA

3月までの米長期金利上昇が
織り込んだもの

 コロナ後の経済回復への期待から、長期金利の上昇が注目されている。

 今年1-3月は米国の長期金利が10年債で一時1.8%弱まで上昇し、昨年末の水準からすると0.9%近い上昇になった。一部では、景気回復によるインフレの加速を織り込もうとしたという解説もされたが、果たして本当にそうだったのだろうか?

 米国の物価連動債の価格から算出される期待インフレ率(BEI)の水準を見てみると、スポット10年物の水準は最も高かった3月末の水準で2.6%台に達していたのに対し、5年後のフォワードBEIは、2.2%台と、大きく下回る水準にとどまっていた(注1)。

 5年物のBEIはすでに過去のピーク水準である約2.9%にと近づいているのに対し、5年後5年物フォワードのBEIの方は過去のピーク水準の約3.2%をはるかに下回る水準にとどまっている。

 市場では、当分の間、インフレはある程度加速するかもしれないが、数年後あるいはそれ以降の長期的なインフレ率はそれほど上昇しないという見方が強いことを示している。