写真:ドル,コイン
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金価格は3月に1トロイオンスあたり1676ドルの安値をつけた後、1700ドル台を回復した。ワクチン接種進展に伴う米景気早期回復期待に伴う米長期金利上昇は売り材料だが、回復観測でインフレ率の上昇期待が高まることは買い材料だ。強弱材料の併存下、金相場が底堅い動きを見せている。(三菱UFJリサーチ&コンサルティング調査部主任研究員 芥田知至)

コロナ禍による換金売りで安値をつけ
その後大幅な金融緩和で史上最高値

 2020年の金相場は、コロナ禍の中、乱高下した。3月に1トロイオンスあたり1450ドルの安値をつけた後、大幅に上昇し、8月には史上最高値の2072ドルをつけた。

 安値をつけたのは、新型コロナウイルスの感染拡大への懸念から、株価や原油価格が急落する中で、投資家が投資戦略の練り直しや追加証拠金を捻出するため、金(ゴールド)も現金(ドル)を求める換金売りの対象になったためとみられる。

 金と並び安全資産とされる米国債にも売り圧力が及び、長期金利は上昇した。2020年3月15日FRB(米連邦準備制度理事会)が緊急FOMC(米連邦公開市場委員会)を開催して1%の利下げを決定した翌16日に金は1450ドルの安値をつけたのだった。

 その後、FRBは各種危機対応策を相次いで発表し、ECB(欧州中央銀行)など他の中央銀行も金融緩和を進めた。23日には、FRBが“必要な量”だけ資産を購入する無制限の量的緩和を決定した。

 資産の換金売り圧力が収まる中、安全資産である金が買われる流れに戻った。金融緩和による金利低下は金利のつかない金投資の魅力を相対的に高めるためだ。その後、各国で財政支出が拡大されて将来のインフレにつながるとの見方も、インフレに強い実物資産である金の相場上昇につながり、8月7日に2072ドルの史上最高値をつけた。

 しかし、金相場は昨年8月に高値をつけた後、下落に転じた。パウエルFRB議長がシンポジウム「ジャクソンホール会議」で一時的には2%を超えるインフレ率を容認して金融緩和を続ける姿勢を示したことは金相場の支援材料だったと思われる。

 だが、9月は米国などで新型コロナの感染拡大ペースが鈍化する中、投資家のリスク選好が回復し、安全資産への需要がやや後退した。香港や華為技術(ファーウェイ)を巡る米中対立への警戒も和らいだ。

 10月は、トランプ米大統領の新型コロナ感染や米追加経済対策を巡る協議の難航が不透明要因となり、金相場は一進一退だった。

 11月は、米大統領選でバイデン前副大統領が有利との観測が強まり、トランプ氏勝利の場合に比べて、財政赤字が膨らみ、インフレやドル下落につながる見方が金相場を支援した。欧州や米国での感染拡大も金相場を押し上げた。