いよいよ訴訟手続きに…

 そのまま3カ月が過ぎ、いよいよ家賃保証会社もこのままという訳にはいかなくなりました。滞納の明け渡しの訴訟手続きになりました。

 今までの家賃保証会社との交渉履歴を見るだけでも、どれだけ内田さんが怒ってきたかが分かります。これは訴訟になっても一筋縄ではいかないな……私はそう覚悟しました。

 支払いを求める私からの内容証明郵便を受け取って、内田さんはすぐに私に電話をしてきました。最初から怒鳴り口調です。

「おまえはこれまでのいきさつを知ってるのか! おまえもあいつらの仲間か!」

 すごい剣幕です。もちろんこちらとしては、いきさつは把握しているし、仲間であるという訳ではないということを一生懸命に説明するのですが、ずっと怒鳴られっ放しです。さすがに私も疲れてきました。

「あのう……。私が内田さんに何かをしましたか? 怒鳴られたら話もできないので、内田さんの希望を聞かせていただけますか?」

 やんわりそう言うと、ほんの少し内田さんのトーンが下がったのです。

「俺さ、あの保証会社の奴と仲違いしたままなんだけど、太田垣さんさぁ、仲を取り持ってくれない? そうしてくれるなら、滞納分全部まとめてすぐ払うからさぁ」

 内田さんなりに、今の状況は良くないと思っていたようです。

「分かりました。じゃあ、担当の人と一緒に謝りに行けば、ちゃんと話を聞いてくれますか? 私も一緒に行きますから」

 私がそう言うと、内田さんはホッとしたような声で、「ありがとう、ありがとう。じゃ、すぐ振り込むからな」そう言って電話を切りました。 翌日早々には、滞納額が全額支払われました。やはりお金がなくて、支払っていなかった訳ではないようです。

 家賃保証会社の担当者に全額振込があったことを連絡すると、かなり驚いていました。ずっと話もできず、怒鳴られっ放しだったのですから、それも当然です。

 お金も全額入金されたので、手続きをする訳にはいきません。会ってくれるということなので、緊急事態宣言中ではありましたが、細心の注意を払って一緒に謝りにいくことになりました。