大手金融機関に勤めていた著者は、40歳で早期リタイアを考え始めた。その10年後に資産1億円を達成、FIRE(経済的自立と早期リタイア)を果たした。著書『【エル式】 米国株投資で1億円』では、年代別の投資指南から最強の投資先10銘柄に至るまで、“初心者以上マニア未満”の個人投資家に再現可能な投資法を徹底指南している。

【米国株投資】FIRE達成の原動力となった「最強の10銘柄」を紹介します(3)Photo: Adobe Stock

エル流「最強の10銘柄」③

【米国株投資】FIRE達成の原動力となった「最強の10銘柄」を紹介します(3)

【前回】からの続きです。

⑦ユニオン・パシフィック(UNP)

ユニオン・パシフィックは、アメリカ最大の鉄道会社です。日本で鉄道というと人を運ぶビジネスをイメージしますが、ユニオン・パシフィックをはじめとするアメリカの鉄道各社が運ぶのは人ではなく、おもにモノ。ユニオン・パシフィックが運んでいるのは、石炭、化学品、農作物、完成車などです。

人を運ぶJRなど鉄道各社は、コロナ禍で人の移動が制限されて打撃を被りましたが、モノの移動は経済活動に不可欠です。アメリカ経済が拡大すると物流も増えますから、中長期的にも堅調と思われます。

アメリカの鉄道各社は「精密定期鉄道」(PSR)と呼ばれる経営モデルを導入しており、業務と経営の効率化に成功しています。鉄道はインフラビジネスですから、新規参入が難しい“堀の深い”ビジネスです。バフェット氏率いる投資持株会社バークシャー・ハサウェイも、ユニオン・パシフィックに次ぐ全米第2位の鉄道会社であるBNSF鉄道を2兆円以上の価格で買収して、傘下に収めています。

⑧ユナイテッドヘルス・グループ(UNH)

世界最大のヘルスケア企業であるユナイテッドヘルス・グループは、各種医療保険を扱うユナイテッド・ヘルスケア社と、医療情報サービスを扱うオプタム社という2社から構成されています。ヘルスケアは暮らしに欠かせないセクターです。

アメリカの医療と保険の仕組みは、日本とは大きく異なります。とくにオプタム社が扱う「薬剤給付管理」(PBM)は日本にはないもの。処方薬を管理し、医薬品会社と契約・交渉・値引きなどを一手に行う仕組みです。

アメリカの医薬品の市場規模は世界のおよそ半分を占めており、処方薬はオプタム社を含む5大PBM社が管理しています。ヘルスケア業界にもデジタル化の波が押し寄せていますが、ユナイテッドヘルス・グループはデジタルヘルスを担うスタートアップ企業を買収して態勢を整えています。

⑨ダナハー(DHR)

日本人でダナハーという名前を見聞きしたことのある人はほとんどいないでしょうが、売上高は2兆円を超えており、時価総額も20兆円超(2022年2月11日時点)。米国株投資家でも投資している人は少ない銘柄ですが、隠れた優良企業です。

ダナハーは不動産投資会社として出発し、現在ではヘルスケア部門のコングロマリット(複合企業)に進化しています。400社以上の企業買収を進め、そこから「選択と集中」を重ねて業績と収益を上げています。

そこで駆使しているのは、トヨタ自動車の「カイゼン」を範として開発した「ダナハー・ビジネス・システム」(DBS)という独自の経営手法。これにより買収した企業の利益率を高めて、それらをスピンオフ(分離)して収益を上げています。

2016年に工業機械部門をスピンオフ、18年には歯科部門をスピンオフしており、現在の主軸は救急医療や病理検査、免疫や血液などに関わる医療機器です。

⑩チャーチ・アンド・ドワイト(CHD)

こちらも日本人はほとんど知らないのに、ほとんどのアメリカ人が知っている企業の代表格。「アーム&ハンマー」という重曹(ベーキングパウダー)の会社として19世紀に創業した日用品の老舗メーカーです。重曹以外にも、洗剤、歯磨き粉、漂白剤、脱毛クリームなどを取り扱い、80以上のブランドを持っています。

景気に左右されにくい生活必需品セクターであり、この分野の巨人ともいえるプロクター・アンド・ギャンブルに比べるとぐっと規模も売上高も小さいのですが、成長性に優れており、株価のパフォーマンスがよい点を高く評価しています。

――これまで3回の連載で紹介した「最強の10銘柄」に、私は2万ドル以上をほぼ均等に投資しています。割安になったら追加で購入することはあり得ますが、売ることは当分ないと思っています。あらためてリストを眺めてみると、ポピュラーな銘柄の組み合わせで、過去の実績とはいえ年率20%を超えるリターンが望めるのが、米国株の素晴らしさです。