中小企業の3社に1社が「過剰債務」の状況にある。東京商工リサーチが4月中旬に行った調査は、驚きの実態を浮き彫りにした。企業の破綻を防ぐための資金繰り支援策は、大きな効果を発揮した一方で、その「副作用」は計り知れない。(東京商工リサーチ情報部 原田三寛)
資金繰り支援による
倒産減少の副作用
中小企業の3社に1社が「過剰債務」――。
4月中旬、東京商工リサーチ(TSR)情報部はどよめいていた。4月1日~12日にかけて実施したインターネットによるアンケートで、自社債務の状況について「過剰感がある」と回答した中小企業が35.0%に上ったためだ。部内の事前予想は10%台が大半を占め、2割に達した場合は「事態は相当深刻」との認識だった。だが、結果は予想をはるかに超えた。
度重なる緊急事態宣言で外出自粛の意識が薄れ、米国や中国経済が復調し製造業を中心に景況感が上向いている。個人消費も最悪期は脱したとの見方があるが、コロナ禍で国内企業が負った傷はあまりにも深い。
2020年4月~21年3月の企業倒産(負債1000万円以上)は7163件で、30年ぶりに8000件を割り込んだ。2020年は新型コロナウイルス感染拡大で景気が冷え込んだが、政府や金融機関の資金繰り支援で企業倒産は2019年度(8631件)より17.0%減少した。