「ぼーっとしている時間」を大事にする

小竹 加藤さんはこれまでさまざまな分野の研究者や学校の先生、塾の先生など、本当にたくさんの方に取材されてきたと思いますが、特に響いたメッセージはありますか?

加藤 どの分野でも、「子どものためになること」を研究している方にはみなさん共通していることがあります。それは、自分の思考や行動を客観的な視点で見て(メタ認知して)、「本当に子どものため?」と常に自問自答されていることです。

 親は子どもを心配して先回りしがちですが、「親が自分の不安を消すためにしていることは、子どものためになっていない」と気付かないといけないんです。

小竹 そこを分けなきゃいけない、と。

加藤 そうです。親が自分の不安を消すためにやっていたり、自分ができなかったことを子どもにやらせようとするのはエゴであって、目的がすり変わっていますよね。

 また、親は「将来のために、いまがんばらせよう」と思ってしまうのですが、児童精神医学の先生によると、子どもにとっては「いま幸せかどうか」がより大事だそうです。「いま幸せ。そして明日も幸せだといいな」という思いを積み重ねていくことで、つらいときにも気持ちを立て直す力が育つと。

小竹 親としては将来のことも気になるし、どこまで関与していいかは難しいですね。

加藤 本当にそこは難しいです。私も自分の子どもにはいろいろやりすぎたかな、と反省もたくさんあります。ポイントとしてひとつおすすめしたいのは、子どもがぼーっとしていたら、放っておくことです。

 いまの子どもは塾や習い事と常に忙しいので、そういうぼーっとして頭と体を休める時間が大切なんです。また、ぼーっとしているときには脳のDMN(デフォルト・モード・ネットワーク)が働くといわれていますが、これがさまざまな脳の活動をまとめあげるのに重要な役割を果たしています。

小竹 「部屋の掃除でもしたら?」とか「宿題やらないの?」などと言いたくなりますけど、ぐっと我慢しないといけないんですね。

「自分から努力できる子」に育てる4つの習慣

小竹 子どもを幸せにするには、親が先回りしすぎてはいけないとよくわかりました。では、子どもが自分から努力できることを見つけて伸び伸びと生きていくには、親はどうサポートすればいいのでしょうか?

加藤 ポイントは4つあると思っています。

「根拠のない自信をつけてあげること」
「好きなことを見つける手助けをしてあげること」
「子どもの『タイプ』を知ること」

「レジリエンス(心の復元力)を鍛えること」です。

小竹 子どものタイプ、なるほど。うちも娘二人で全然性格が違います。長女は本を読んだり歌うのが好きで、次女はお友達が大好きなタイプ。

加藤 きょうだいは本当に別の人間ですよね。ハーバード大学の心理学者、ハワード・ガードナー博士によれば、人間の知能は8タイプに分けられ、得意分野はそれぞれ違うそうです。

 音読したり体を動かしたりするほうが集中できる子もいるので、「座って静かに勉強しなさい」よりもその子に合った方法があるかもしれない

 上手にサポートしてあげるためには、子どもの個性をよく見ることですね。子どもを観察することは、「好きなことを見つける手助け」にもつながります。見ていると絶対に夢中になっていることがありますから。

小竹 レジリエンスはどうやって鍛えるのがいいでしょうか?

加藤 親御さんが日々、「あなたのこういうところがすごくいいよ」と子どもに言って、いい面に注目してあげることは、自信をつけることにも、レジリエンスを鍛えることにもつながります。

 本書では国際ポジティブ心理学会理事のイローナ・ボニウェル博士の方法を紹介しています。博士は、「自分の長所」や「自分が持っているもの」「自分ができること」などを考えて、自分の強みを知ることで、レジリエンスが生まれると言っています。

「努力できる子」の親がしている4大習慣