前2回で貸借対照表(B/S)、損益計算書(P/L)の読み方を解説してきた。今回は財務三表の残りの一つ、「キャッシュ・フロー計算書(CF計算書)」の読み解き方をマスターしよう。CF計算書を理解できれば、企業が投資したキャッシュをきちんとその後の営業活動で回収できているかどうかを確かめることができる。(中京大学国際学部・同大学院経営学研究科教授 矢部謙介)
キャッシュ・フロー計算書からは
現金の稼ぎ方・使い方が分かる
今回は、三つ目の財務三表であるキャッシュ・フロー計算書(CF計算書)を取り上げ、楽天、くら寿司、キリンHDのキャッシュの動きについて読み解いてみることにしよう。そこで、まずはCF計算書の基本的な読み方をマスターしておきたい。
CF計算書を作成する目的は、1年間を通じた現金の収支を表示することにある。「勘定合って銭足らず」という言葉があるが、これは、損益計算書(P/L)上は利益が出ていても、現金が足らなくなってしまっている状態を指す。しばしば、P/L上は利益が出ているにもかかわらず、倒産してしまう「黒字倒産」という事例があるが、これは支払いに充てなければならない現金が不足するために起こる。
そこで、経営を分析する上では、支払いに必要な現金が十分足りているのか、会社において現金をどのように稼いでいて、どのように使っているのかを読み解くことが重要だ。CF計算書からは、こうした現金の動きを見ることができる。