ジェネリック不正製造事件が浮き彫りにした、医薬品製造の「構造的課題」ジェネリック不正製造問題の背景にある構造的な課題とは? Photo:PIXTA

ジェネリック医薬品メーカーの小林化工が、医薬品を不正に製造・販売したとして業務停止命令を受けた。水虫などの治療薬として使用される医薬品に睡眠導入薬が混入されていたのである。問題の背景には、医薬品製造における構造的、制度的な課題が見え隠れする。われわれの生活にも大きく関わる医薬品の安全性の問題と、その対策について専門家に聞いた。(医療ジャーナリスト 木原洋美)

決して他人事ではない
睡眠導入薬混入事件

 食料品の購入時には産地や賞味期限、添加物などを細かく吟味する人でも、処方薬に関しては医師、薬剤師の判断に身を委ね、何ら吟味せずに使用している人は多いのではないだろうか。

 それだけ皆、日本の医療を信頼しているということなのだろうが、昨年12月、その信頼を打ち砕く事件が起きた。ジェネリック医薬品メーカーの小林化工(福井県あわら市)が製造販売した水虫やいんきんたむし、カンジダなどの感染症治療薬「イトラコナゾール」に睡眠導入薬が混入されるという前代未聞の事件が発覚したのである。

 報道によれば、混入は厚生労働省の承認を得ていない「原薬の継ぎ足し」という工程で、原料を取り違えたのが一因。加えて、2人で行うべき作業を1人で行い、ダブルチェックが働かなかったという理由も挙げられている。同剤を処方されたのは344人、3月8日時点で245人に健康被害が出ている。この中には、車の運転中に意識を失うなどして事故を起こした人が38人おり、服用した80代男性と70代女性の2人が死亡した。

 テレビや新聞では、ざっくりと「皮膚病などの治療薬」と報じているので、「自分とは関係ない」と思っている人も多いかもしれないが、水虫は日本人の10人に1人が罹患(りかん)する“国民病”。なかでも爪水虫の患者は1100万人もいると推定されている。しかも足指の間などにできる水虫は市販の塗り薬でも治るので、靴を履く時間が短くなる年代で減少するが、爪水虫は内服薬を使ってしっかり治療しないと治癒しないため、一度罹患するとそのままとなり、高齢になるほど患者が増える。カンジダ症も患者数は多く、女性の5人に1人が発症するとされているし、男性だってかかる。決して他人事ではないのである。