38万部超のベストセラー『餃子屋と高級フレンチ』シリーズでおなじみの著者・林總氏の最新刊『たった10日で決算書がプロ並みに読めるようになる! 会計の教室』がダイヤモンド社から発売。本連載では、同書の中から抜粋して決算書を読み解くために必要な基本の知識をお伝えしてきました。今回も特別編として書下ろしの記事を掲載します。登場人物は、これまでと同じく林教授と川村カノンの2人。注目企業の決算書はどうなっているのか? 注目企業の会計のカラクリなどについて解き明かしていきます。しばしお付き合いください。好評連載のバックナンバーはこちらからどうぞ!

コロナ禍のデパート業界で三越伊勢丹の赤字額がいちばん大きい理由Photo: Adobe Stock

コロナ禍で三越伊勢丹の苦境の原因は?

カノン 三越伊勢丹の業績が悪かった理由を考えたのですけど、もしかして店舗の場所が良すぎるからではないかな、と思いました。

林教授 場所が良すぎるね? で、その理由は。

カノン だって、もともと三越の本店は日本橋で伊勢丹は新宿ですよね。三越は銀座のど真ん中にも店舗があります。どちらも超一流の繁華街です。今回の緊急事態宣言で最も影響が大きかったのは、なんといっても東京です。だから、売上高が激減して赤字が多かったと考えました。

林教授 合格点を60点とすると、その答えは59点だね。

カノン あと1点か。

林教授 その1点が大切なんだよ。考えて欲しいのは、これらの企業グループは百貨店業だけを営んでいるわけではない、ということだ。他に、不動産業や金融業も行っている。もちろん一番規模が起きいのは百貨店業だけど。

カノン そうなんですね。

林教授 今回の緊急事態宣言で一番影響を受けたのは百貨店業だった。中でも三越伊勢丹は長年、百貨店業に力を入れてきたから、売上高に占める割合が大きい。そこにコロナ禍の直撃をくらったわけだ。