38万部超のベストセラー『餃子屋と高級フレンチ』シリーズでおなじみの著者・林總氏の最新刊『たった10日で決算書がプロ並みに読めるようになる! 会計の教室』がダイヤモンド社から発売。本連載では、同書の中から抜粋して決算書を読み解くために必要な基本の知識をお伝えしてきました。今回からは、特別編として書下ろしの記事を掲載します。登場人物は、これまでと同じく林教授と川村カノンの2人。注目企業の決算書はどうなっているのか? 注目企業の会計のカラクリなどについて解き明かしていきます。しばしお付き合いください。好評連載のバックナンバーはこちらからどうぞ!
SBGの利益は、短期間で1兆円も減少
林教授 前回のレクチャーでソフトバンクグループ(SBG)の利益4.9兆円の中には、投資した株式の評価益が含まれているという話をしたね。
カノン はい。ファンド事業の投資利益ですね。
林教授 その中には3月にニューヨーク証券取引所に上場した「韓国のアマゾン」と言われているクーパン社の株式評価益が2.6兆円含まれていた。上場初日の株価は1株69ドルだったが、その後見る見るうちに下がり続け、5月20日は37ドルになってしまったんだ。大雑把に計算するとSBGの利益は1兆円減少したことになる。
カノン つまり決算日のタイミングで利益が大きく変わるんですね。なんだか風船みたい。
林教授 ちなみに、SBGの決算書は国際会計基準(IFRS)に基づいて作られている。日本の会計基準は評価益は認めないからこうはならないけどね。
カノン 『会計の教室』に「決算書は期末日の瞬間を表したスナップショット」って書かれていたけど、こういうことなのですね。
林教授 クーパンが3月に株式公開したのは、SBGの業績を最高に見せるための会計戦略だった、とボクは思うね。
カノン その会計戦略という言葉、先生の他の著書にも出てました。
林教授 『餃子屋と高級フレンチ』でとりあげた日産自動車の話だね。君は記憶力がいい。当時、カルロスゴーン社長はさまざまな手法を駆使して作成した決算書を公表した。その劇的な決算数値に日本中が驚いた。今だから言えるんだが、日産自動車のV字回復を印象付ける大芝居だったんだ。
カノン なるほどね。何となくわかる気がします。つまり、利益を鵜呑みにしてはいけないんですね。肝に銘じなくては。
林教授 利益だけじゃないんだよ。売上も同じだ。
カノン えっ、ちょっと待ってください。先生は『会計の教室』の中で「ほとんどの経営者は売上と利益しか興味がない」と書かれていましたけど、売上も信じてはいけないのですか?
林教授 今回はその話をしよう。
カノン ぜひ聞かせてください。