衣料品と食料品の比率の違いが、赤字額に反映

カノン 衣料品売り場は閉まってましたけど、食品売り場は開いていましたよね。

林教授 三越伊勢丹はね。緊急事態宣言の規制対象は「生活必需品」だった。

日経新聞は、三越伊勢丹の苦境の原因を次のように報道している。

「生活必需品ではない」として休業する衣料品売り場や、営業規制がかかる東京都心の店舗の売上比率が大きいからだ。今回の休業による売り上げの機会損失は290億円に達する。2021年5月13日電子版

機会損失は、もし店を閉めなければもたらされたであろう利益のことだ。

カノン ものすごい損失ですね。ちょっと気になるのですけど、三越伊勢丹は衣料品を「生活必需品ではない」と考えているんですね。

林教授 この判断が会社の業績に大きく影響したんだ。この点は後で話そう。ここで三越伊勢丹と高島屋とJ.フロントリテーリングの事業損益を比較してみよう。3社の業績について、君の感想を聞かせてもらいたいね。

カノン 百貨店業の割合と赤字の大きさですね。赤字の一番大きい三越伊勢丹の百貨店業の割合が92%で、高島屋は84%、J.フロントは61%です。つまり百貨店業の割合が大きい会社ほど業績が悪かったということですか。

林教授 そうだね。ついでに百貨店業の売上高に対する赤字の割合を計算してごらん。

カノン 三越伊勢丹が4%、高島屋が3.7%、Jフロントは1%です。なぜこんなに大きな差が出たのでしょうか。

林教授 理由として考えられるのは、百貨店業における食料品と衣料品の売上高の割合だ。三越伊勢丹は衣料品31%、食料品26%。高島屋は衣料品25%に対して食料品は34%だった。

カノン だから休業要請(4月25日~5月31日)によって、衣料品に力を入れてきた三越伊勢丹の売上げが大きく減ったんですね。