まら東京・高円寺にある山形料理屋「まら」のメニュー Photo:Diamond

ここ数年、東京の高円寺周辺では山形料理をテーマにした飲食店が増えている。それらの多くは同じ系列店で、「株式会社どりーむずかむとぅるー」の運営によるもの。なぜ高円寺なのか。そして、地方の郷土料理をどのように東京で広めているのか。同社取締役副社長の高橋勇氏に聞いた。(清談社 沼澤典史)

高円寺を中心に
11店舗を展開

 故郷を離れている人にとって、その土地にある郷土料理屋は懐かしい味を思い出させてくれるありがたい場所だ。全国に郷土料理屋は数多く存在するが、なかでも東京・高円寺にある山形料理屋「まら」には熱心なファンがいることで知られ、コロナ禍でも週末は常に満席状態、平日も予約なしでは入れないことも少なくない。

 運営するのは「株式会社どりーむずかむとぅるー」だ。旗艦店である「まら」の他、「こあら」(中野新橋)、「椿」(高円寺)、「紅い花」(高円寺)などの山形料理屋をはじめ、カレー店「くじら」(高円寺)、ラーメン店「黒黒黒(みくろ)」(高円寺)、ギャラリー「FAITH」(高円寺)など、11店舗を展開している。

 高橋氏は清水幸佑社長とともに、2009年に居酒屋「音飯(おとめし)」を高円寺に開店。ふたりはともにバンド活動を行い、開業するまではフリーターだった。フェスに出店したことがきっかけで、飲食店への興味が湧いたという。

「高円寺は昔から遊んでいたのでなじみがありましたが、開業したのは、たまたまいい物件があったから。最初は山形料理ではなく、『高円寺メニュー』『高円寺カクテル』とか適当でしたよ(笑)。もちろん、それではお客さんは来ない。そこでお互いルーツがある山形の料理を始めることにしたのです。ただ、当時は料理よりも音楽やアートなどのカルチャーをメインにしたお店でしたね」