心を円で描いたものを、ここでは「心の陣地」と呼ぶことにします。心の陣地とは、ここまでは自分のなわばり、という線引きをした領域のことです。
「なわばり」では少し響きが強いと感じ、もっとフラットで広い意味を持つ言葉を探し求めたら、「陣地」という表現がしっくりきました。私以外の人にも通じるだろうかと思い、セッションやセミナーで「陣地」という表現を使って説明してみると、「ああ、そういうことなんですね!」とたくさんの共感を得ることができました。
心理学が好きな方でしたら、「人間関係において境界線を引く」という話を聞いたことがあるのではないでしょうか。
私はこれまで何回も、「他人との間に健全な境界線を引きなさい」というアドバイスを受けました。ですが、境界線を引く、という表現が私にはしっくりこなかったのです。まるで相手を拒絶して、突き放すかのようなイメージしか持てないからです。
相手と自分との間に線を引くと、相手を余計に怒らせたり、不機嫌にさせてしまうのではないかと思っていました。その一方で、相手の機嫌をとることにつくづく嫌気がさしていたのも事実です。
ですが、私はあるとき、相手に感情移入してしまうから線引きが難しいのだと気がつきました。そこで、相手と自分を「円」で描き、円の重なり具合で人間関係を測ってみたのです。すると、ラクな気持ちで、しかも自分が主導権をにぎって相手との距離を測れるようになりました。
好きな人や気が合う人とは、円が重なり、心が通っています。
嫌いな人や嫌いな話題のときには、心に壁をつくり交流を遮断しています。
心の陣地は目には見えませんが、自分ではちゃんと感じています。人それぞれ、その人なりの心の陣地を持っており、自分の心の陣地では安心できます。
いつでも「自分の心の陣地で生きる」意識を
傷つきやすい人が意識するべきことは、「自分の陣地で生きる」です。
「心の陣地」は、相手との心の距離を見るためだけに使うものではありません。「ここまでが私の陣地だ」とわかりやすく意識するのにも使います。
傷つきやすい人は、必ずどこかに「自分の心の陣地を思い出せる場」を持っているものです。場所でいうと、自宅の自分の部屋、職場のトイレや休憩室などです。自宅ではひとりにもなれないし安心もできないという場合は、ホッと一息つけるカフェや公園のベンチなどがそうなるでしょう。