文大統領は最後の1年間を
北朝鮮との関係改善に集中

 2022年5月の文政権の任期末まで1年を切る中、最終年の最大の課題は北朝鮮との関係改善である。それについて文大統領の思いを載せたのがタイム誌のインタビューである。

 タイム誌が24日公開した文大統領とのインタビューで、同氏は「(朝鮮半島の平和増進のための)時間があまり残されていないことを知っている」「今は平和が維持されているが、いつでも揺るぎかねない脆弱(ぜいじゃく)な平和」だと述べた。

 タイム誌の巻頭記事の見出しは「最後の提案」である。文大統領は北朝鮮の核弾頭と大陸間弾道弾(ICBM)の廃棄を米朝間の議題にするためには「非核化および制裁緩和の好循環」が必要だと述べた。

 文大統領は、金正恩総書記が「我々の将来世代にもっと良い未来を引き継がなければならず、我々の子供たちにまで核を抱えての暮らしをさせるわけにはいかない」と真剣に語ったことを紹介しながら、金正恩総書記の性格について「非常に率直で意欲的で、強い決断力を持っている。国際的な感覚もある」と評価した。文大統領は北朝鮮に融和的なメッセージを伝え、米国や中国も、朝鮮半島の平和プロセスに共感していることを強調した。

 半面タイム誌は、朝鮮半島平和プロセスを進めるのが容易でないことを指摘し、金正恩総書記に対する文大統領の変わらぬ擁護を「錯覚」だとする多くの北朝鮮専門家の見解を併せて紹介した。

 文大統領は、任期末までの最後の1年間、北朝鮮との関係改善を図ることにすべてのエネルギーを集中させているようである。しかし、タイム誌は「金正恩総書記は国連、米国、欧州連合の制裁緩和といった一方的な譲歩がなければ、何も諦めないという立場」とし、「バイデン大統領としては(制裁解除の)再考の余地はない」と分析した。

 このインタビューは9日にリモートで行われたものであり、文大統領の制裁解除・緩和への思いが強いことを物語っている。それだけにソン・キム代表の訪韓には特別な思いで臨んだことであろう。それがソン・キム代表に対する厚遇にも表れている。しかし、文大統領の思いはバイデン政権に届かなかったようである。

 タイム誌は「文大統領自ら今の状況を立て直すことができなければ、おそらく誰もできないという暗鬱な事実を知らせたのが、文大統領の残した遺産であろう」との悲観的見通しを述べている。