実は荒川区に荒川は流れていない。隅田川沿いにある墨田区は、本来であれば「隅田区」と表記されるべきでは? 話題の新刊書『おもしろ雑学 日本地図のすごい読み方』からの抜粋で、日本全国、北から南まで、日本地理の知られざる仰天知識を紹介していく。
「荒川」という名前なのに
荒川区に荒川は流れていない
東京都と埼玉県の両都県の県境を悠々と流れるのは、一級河川の荒川だ。流路の総延長距離は173キロメートルにもおよぶ。川幅は埼玉県の御成橋付近で最も広くなり、2537メートルもある。この川幅は日本一長い川・信濃川の川幅より広い。
そんな荒川にひとつの不思議がある。地図を見れば気づくことだが、荒川と呼びながら荒川区を流れていないことだ。では、荒川区という地名はどこからきたのか。
ここで荒川の歴史を辿ってみよう。
荒川はその昔、氾濫する「暴れ川」として人々を恐れさせた。埼玉、山梨、長野の3つの県境が接する甲武信ヶ岳を水源とし、利根川へと注いでいた。これがもともとの荒川で、現在流れる荒川の流路とは異なる。
この暴れ川を何とかしようと対策を練ったのが徳川幕府だった。現在の熊谷あたりで新たに流路をつくり、川の流れを南へと向かわせた。そして、付近を流れていた和田吉野川、入間川と合流するようにした。これにより下流部の流れは格段に安定するようになった。人々は暴れ川のイメージを払拭するためか、下流部は「荒川」ではなく、「隅田川」と呼んでいた。