『餃子屋と高級フレンチ』シリーズ最新作、『50円のコスト削減と100円の値上げでは、どちらが儲かるか?』(林總著)の刊行を記念し、同書のPART3までを特別公開します。主人公のヒカリと会計のプロ安曇教授のコンビが赤字のファミレスを立て直す物語。第5回はPART2の後半をご紹介します。本連載は毎週月曜日更新予定です。
ヒカリは、千の端店での2週間の実習を終え、本社にいる猪木を訪ねた。そして、ゴミ箱に捨ててあった月次損益計算書を偶然見つけてしまい千の端店が赤字だとわかったこと、引き続き千の端店で実習を続けたい旨を告げた。猪木は「赤字のことは誰にも言ってはいけない」と言い残して、部屋を出て行った。
クラークシップ延長へ(@安曇研究室)
「実習を続けたい?それはおおいに結構なことだが、猪木君は乗り気ではないそうだ。どうなっているんだね」
そう言うと、安曇は好物のアールグレイを一口飲んだ。
「正直言って、最後の日まで、このまま続けようなんて考えてもいませんでした。仕事は単調ですし、反りが合わない人もいて――。でも、口惜しいことに、その人のほうが、私よりずっと仕事にくわしいんです」
「なるほど、君はむずかしい管理会計の本を勉強してきたから、その子よりずっと知識はあると思っていた。だが、君はその子にかなわなかった。実に愉快な話だ」
安曇はうれしそうに笑った。
「全然愉快じゃありません」
ヒカリはプッとふくれた。
「それでこのまま引き下がれない、と思ったのだね」
するとヒカリは首を左右に振った。