人々を熱狂させる未来を“先取り”し続けてきた「音楽」に目を向けることで、どんなヒントが得られるのだろうか? オバマ政権で経済ブレーンを務めた経済学者による『ROCKONOMICS 経済はロックに学べ!』がついに刊行となった。自身も熱烈なロックファンだという経済学の重鎮アラン・B・クルーガーが、音楽やアーティストの分析を通じて、ビジネスや人生を切り開くための道を探った一冊だ。同書の一部を抜粋して紹介する。
アーティストの稼ぎは
ツアーが大部分を占めている
2017年にツアーに出たトップクラスのミュージシャン48組を見ると、平均で所得の80%をツアー、15%を録音した曲、5%を出版で稼いでいる。
ツアーは稼ぎの大きな部分を占めているのだ。
このパターンにはもちろん例外もある。
だいたいは短い間しかもたないのだけれど。
カナダのラッパー、ドレイクは他にはなかなかない立ち位置にあって、自分で曲をプロデュースし、自分のレーベルOVOサウンドを持っている。
ビルボードによると、彼は2016年に録音した音楽で2330万ドルを稼いだが、ライヴでは「たったの」1360万ドルしか手にしていない。
2017年、ドレイクはツアーには出ず、録音で1030万ドルを稼いだ。
「稼ぎは毎年、でこぼこだ」
クリフ・バーンスタインはそう言う。
彼のお客であるヘヴィメタル・バンドのメタリカは、2016年にレコードの販売で1320万ドル、ツアーで380万ドル稼いだと報じられている。
でも2017年は、レコードの販売で1090万ドル、ツアーで3070万ドルの稼ぎだった。
5年間で見ると、このバンドは典型的に、レコードの販売よりツアーでたくさん稼いでいるとバーンスタインは言う。
彼によると、幅広く見てメタリカがツアーよりレコードで稼いでいた時代はとうに過ぎた。
そしてニールセン・サウンドスキャンによれば1991年以来のレコード売り上げがガース・ブルックスとビートルズ以外誰にも負けないメタリカがそんな調子なら、まあおそらく他の人たちもほとんどだいたい同じようなものだろう。
全体として、2017年にツアーに出た48組のアーティストのうち47組はレコードの販売とストリーミングよりもライヴ・パフォーマンスで収入を得ている。
だいたいのミュージシャンはライヴ・コンサートで生計を立てている。
ストリーミングもそんなあり方を変えることはなさそうだ。
フリートウッド・マックが、「プレイヤーがあなたを好きなのはプレイしてる間だけだ」と言ったとき、彼らは正しかったのかもしれない。
でも同時に、彼らがお金を儲けているのはプレイしている間だけだというのも、そんなに無理筋のこじつけではないだろう。
そしてそれを証明するかのように、もはやメンバーは70代にもなるフリートウッド・マックは2018年から2019年、50ヵ所以上の街を回るツアーに出ている。
(本原稿は『ROCKONOMICS 経済はロックに学べ!』(アラン・B・クルーガー著、望月衛訳)からの抜粋です)