面倒見もよく、親切だけど隣にいるだけでイライラさせられる――そんな相手に心当たりはないだろうか。その人は周りに「頑張っているアピール」をしているのかもしれない。“人生の指針”を示してくれる新刊『人生は期待ゼロがうまくいく』(著:キム・ダスル、訳:岡崎暢子)の発売を記念した本稿では、ライターの柴田賢三氏に「イライラ」から心を守るコツについてのエッセイをご寄稿いただいた。(企画:ダイヤモンド社書籍編集局)
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なぜか「空咳」の多い先輩
私は数年間だけ不動産業界に身をおいていたことがある。
そのときに同じ部署で机を並べていた高梨さん(仮名)という先輩がいた。
高梨さんは面倒見がよく、初めての業界で戸惑う私に丁寧に仕事を教えてくれた。ランチや仕事終わりの居酒屋などにも誘ってくれ、すぐに打ち解けて仲良くなれた。
ある日、隣に座る高梨さんが「ケホ、ケホッ」と乾いた咳をしていることに気づき、「カゼですか?」と心配すると、「あ、大丈夫、大丈夫」と答えた。
ここで、あることに気づいた。そういえば高梨さんは、毎日のように乾いた咳を繰り返していたのだ。入社当初は仕事を覚えるために必死だった私も、数カ月が経って心に余裕ができたことで高梨さんの咳が気になったのである。
軽い咳払いが癖になっている人はよくいるものだ。高梨さんも、そのタイプなのだろうと思ったが、彼には他の癖もあった。
パソコンに向かって「独り言」
パソコンの画面に向かって、なにやらブツブツとつぶやく高梨さん。独り言も多い人だなとは感じていたが、たまにそのボリュームが会話レベルになる。
「あれ? あれってどうなってるんだっけ?」
明らかに私に何か質問されたものだと思い、「なんですか?」と聞き返すと、「あー、なんでもない、なんでもない。独り言」と返された。
直後、「あー、そっか、そっか。こっちに移動すればいいんだ」と、パソコンに向かって鉄道マンのように指差し確認をしながら、高梨さんは一人で答えにたどりついたようで、今度はキーボードが壊れそうな勢いで叩き始めた。
バチバチバチ! その間、「ケホ、ケホッ」の空咳も続いている。
次に気になったのは足音だ。コピーをとるために席から移動する際などに、軍隊の行進レベルの靴音を立てるのである。
ドス、ドス、ドス、「ケホ、ケホッ」、「あー、そうか、そうか!」、バチバチバチ!
一度、気になり始めるとなかなかの騒音だ。



