なぜ「性の安全教育」と言えなかったのか

――性教育を忌避していた時代が長かったのに、文科省が急に「生命(いのち)の安全教育」をスタートさせたことを水野さんはどう見ていらっしゃいますか?

 そもそもこれは、文科省主導の取り組みではありません。2020年6月に、内閣府の男女共同参画で「性犯罪・性暴力対策の強化の方針」が決定し、内閣府、警察庁、法務省、文科省、厚生労働省の各省庁がそれぞれの対策を行うことになりました。
※参考:2020年6月11日の通知

 昨今報道されることが増えた、わいせつ教員への厳正な処分や学校で相談を受ける際の体制の強化など文科省の課題はいくつかあり、その中のひとつという位置付けです。

――「性教育」という文脈ではない。

 はい。文科省の関係者が「これは性に関する指導ではない」と明言したと聞いています。

――そもそも、なぜ「生命(いのち)の安全教育」と名付けたのか。

 中身からすると、どう見ても「性の安全教育」なんですよね。「性暴力、性犯罪の被害者にも加害者にもしない」という意図は明確ですし、そこには「性」という文字が出てくるのです。やはり保守派議員からの「性教育」への抵抗感が根強かったようだと聞いています。

――性教育をなぜそこまで忌避するのか、一般からすると分かりづらい感覚だと思います。

 根本にあるのは、「日本の伝統的な家族観を破壊する」という考え方です。選択的夫婦別姓や同性婚の反対と同じですね。性教育や男女平等の考え方は、それを脅かすものとなっていると考える人は政治家の中にも一定数います。