海外ではインフレ懸念高まるが
日本の消費者物価は上がらない
原油を初めとして国際商品市況が上昇し、アフターコロナを見据えた景気回復観測もあって、海外ではインフレ懸念が高まっている。
新型コロナウイルスのワクチン接種が進展し、景気回復ペースが加速している米国では、すでに物価上昇率がかなり高まっており、米連邦準備制度理事会(FRB)によるゼロ金利解除のタイミングが前倒しになるのではないかという思惑も出ている。
それでも日本の消費者物価は上がらない。5月の消費者物価(除く生鮮食品)は、前年同月比+0.1%と10カ月ぶりに上昇したが、横ばいの域を出ていない。
たしかに、ここ1~2年の物価下落は、2019年の幼児教育無償化、2020年の高等教育無償化による教育関連の価格急低下、Go Toトラベルによる旅行や宿泊価格の急低下、今年に入ってからの携帯電話の低料金プラン開始など、消費者物価の低下を促す経済政策が影響しているのは事実だ。しかし、そうした要因を除いても日本の消費者物価に上がる気配はない。
国際商品市況の上昇といった川上のインフレに直面しているのは日本経済も同じだ。実際、5月の国内企業物価は、前年同月比+4.9%と2008年9月以来の高い伸びとなっている。それでも川下の消費者物価が上がらない。