この調査リポートは、発表当時、それほど注目されなかった。しかし、法律違反による個人情報の収集・使用問題がクローズアップされている今、リポートの内容は中国の読者に大きな衝撃を与えている。そこでDiDi研究院が米国カリフォルニア州シリコンバレーに位置するマウンテンビュー(Mountain View)にある所在地問題も話題になり、DiDiがビッグデータを通じて中国の中央省庁の移動規則を監視しており、その情報は米国側が所有しているといった印象を広げた。

「環球時報」は、DiDiのことを「人々の移動に関する個人情報を最も詳細に把握していたIT企業であることに疑いはない」と指摘したうえ、「いかなるIT企業も、国家よりも詳細な中国人の個人情報を保管する存在になってはいけない。自由にデータを活用する権利は、さらに与えてはならない」と警告した。

 こうした世論を背景に、サイバースペース管理局は7月10日、100万ユーザー以上のデータを保有する企業は、海外で株式を上場する前に国家安全保障上の審査を受ける必要がある、と発表した。

 報道によると、2021年上半期、米国で上場した中国企業は38社(SPACおよびOTCを除く)、調達した金額は合計135億3700万ドル(約1兆4960億円)に達した。現在、少なくとも23社の中国企業が上場の準備中だという。

 サイバースペース管理局の今回の発表は、これから中国当局がデータの扱いに関する規制をさらに強化し、重要データが外国での上場後に外国政府に悪用されるリスクを回避するために、企業の国内上場を推進する方針を意味するものだとみられる。DiDiの米国上場による米中間の政治的、経済的攻防戦の波紋はまだ広がりつつある。