同様のことはカップ麺の世界でも起こっている。定番商品の東洋水産「マルちゃん赤いきつね」や日清「どん兵衛」でも、関東と関西でつゆの味を変えているが、その境界線は関ケ原だというのである。

 つゆだけではない。たとえば「月見そば」の卵のあしらい方にも東西の違いがある。関東では割ってすぐの生卵をそばにのせて出される。つゆを夜空に見立て、夜空に浮かぶ満月を楽しむような風情が生まれる。

 一方の関西風では、ゆで上げたそばを椀に盛り、次に卵を中央に落とす。そこに温かいつゆをかける場合が多い。卵は白みがかった凝固状になっていき、見た目は「おぼろ月夜」の雰囲気を醸し出す。しかも卵がつゆと融合して関西人好みのまろやかさを増すというのだ。

 薬味の違いもある。濃い味わいの関東では白ネギが使われるのに対して、関西ではぬめりを伴う青ネギが薬味に添えられる。薬味ひとつとっても関東と関西では微妙に異なるのだ。

 こうしてみると「たかが駅そば」と侮れない。駅そばの世界でも、関ケ原は「天下分け目」の境界線といえるのだ。

「湘南」の場所は何となくわかるが、
では範囲はどこからどこまで?

 洗練され、どこか文化的な香りが漂う海が似合う街並み――。そんなイメージが強いのが湘南エリアである。江戸時代から風光明媚な場所として浮世絵にも登場する歴史を持ちながら、ハイカラな雰囲気が街にはある。車のナンバープレートも「湘南ナンバー」にこだわる人がいるなど、「湘南」ブランドはいまも健在である。

 ところが「湘南ってどこから、どこまでを指すの?」というシンプルな疑問に、答えに窮してしまう人は多いに違いない。一般的には神奈川県の海岸線を東西に走る国道134号のうち、逗子市から茅ケ崎市までを「湘南エリア」と指すことが多い。