菅政権にとっての
「2つの安心材料」とは?

 ただし、菅政権について特殊なのは、分裂してまとまりを欠く「野党の弱さ」と、安倍晋三前首相が党内のライバルの芽を摘んだことによる「ポスト菅不在」の二つの要素であり、これらは相対的な安心材料だ。どちらも、安倍政権から引き継いだ遺産である。

 特に野党は、「政権批判のためには選挙での連携を優先する」という基本ができておらず、主に共産党との関係を巡って愚かな分裂を止められずにいる。さらに、国民に不評だった民主党政権時代の有力者がそのまま党の目立つポジションにとどまっているので、国民の人気を集められない。

 ビジネスに例えると、巨額の損失を出した会社が社長交代できないために株価が低迷するような状況だ。あるいは、品質の問題を起こして回収した商品を、名前もパッケージも変えずにまた売り出しているような状況に近い。明らかな「マーケティング的失敗」なので、いい加減に気づくべきだと思うのだが、個々の政治家には簡単に身を引けない事情があるのだろう。

 一方の菅首相も、ここまでの選挙の実績や支持率の推移から見て、党内では「選挙の顔にならない」と見られている可能性が高い。与党側も「商品の包み紙」に問題を抱えている。いわば、弱者同士の均衡が存在している。

デルタ株以外の心配
「菅下ろし」の有無は五輪運営に懸かる

 さて、コロナ感染拡大の大きな原因になっている新型コロナウイルス「デルタ株」の感染力は、なかなかに手強い。

 ワクチン担当の河野太郎行政改革担当大臣は、ワクチン接種が「10月ないし11月のなるべく早い時期に行き渡る」と述べている。仮にこの通りに進むとしても、オリンピックが終わる8月、さらには9月にはまだワクチンが行き渡っていないので、感染拡大が深刻な状況になる公算が大きい。そのため、その状況が世論的に「オリンピック開催を含めた菅内閣のコロナ対策の失敗」と解される可能性は低くない。