コロナ禍でペットを飼う人が
じわじわ増えているワケ

 新たにペットを飼おうという人が激増している背景事情はうっすらとわかります。コロナ禍で癒やしが必要だからです。

 昨年の7~9月、コロナ禍で私たちの生活が一変した直後の消費実態について総務省の「家計調査」を調べてみると、コロナ禍で消費行動がどう変わったのかがわかります。

 二人以上の勤労世帯を例にとってお話しすれば、コロナがなかった1年前の同じ時期と比べて支出全体は平均で8%減りました。収入が減少した人も、未来への不安を感じた人も、どちらもコロナ禍で消費を抑えたことが数字から見て取れます。とはいえ、生活上必要な支出は減らすわけにはいきません。食料の支出は前年同月比1%増、つまりほとんど変わっていません。

 一方で、コロナで大幅に減ったのが不要不急の消費です。外食が23%減、旅行娯楽が34%減、そしてアパレルへの出費が28%減となりました。直近の緊急事態宣言でも、飲食業・旅行業・アパレル業は大打撃を受けていますが、それが数字でも裏付けられています。

 さて、前述の家計調査ではペットに関する支出は「その他」の項目でくくられていて、ペット単独に該当する支出項目はありません。しかし、コロナ禍で支出が激増している別の項目がふたつあります。ひとつはアルコールで23%増、もうひとつがたばこで31%増でした。

 ここからわかることは、私たち一般国民はコロナ禍で生活が苦しくなる中で、心の安定や癒やしをもたらす支出だけは増やしているということです。多くの人が、酒とたばこは減らすわけにはいかないぐらいの状況まで追い詰められているのです。

 このあたりの機微がわかっていれば西村大臣もいずれ総理の座に就くことができるかもしれませんが、それはまた別の話ということで…。

 今回言いたいことは「国民が心のやすらぎを求める方向に、消費全体が向かっている」ということです。間接的な証拠ではありますが、ペット需要が増えている背景が理解できる数字です。

 では、どのような人がペットを飼い始めるのか?データを見れば明らかなのですが、ペットの飼い主の最多は50代です。そして動機となる条件はふたつ。子どもが独立したさびしさと、経済的な余裕です。

 先ほどお伝えしたように、コロナ禍でペットの価格が急上昇しています。「今までペットショップで20万円で購入できたチワワが40万円代に値上がりして、手が出せない」などという話を耳にしますが、そのような需給の中で新たにペットを飼えるのは確かに生活が豊かな消費者層のはずです。