漫画キングダムPhoto:PIXTA

 昭和の終わり頃、社長室に招かれると、本棚には間違いなく中国の古典があった。また、「三国志の英雄に見る人間学」とか「項羽と劉邦の運命を決した駆け引き」といった特集を組む、中国の古典をもとに経営を語る雑誌も必ず置いてあって、その話題で盛り上がった。そして、経営者が社員の前で、「孔子いわく○○」や「諸葛亮孔明はこうやって窮地を脱した」などといった話をするのはごく普通のことだったように思う。

 中国古典の人物を考えるのはとても面白い。何千年の歴史を経て伝えられている、一歩間違えば、命を失う極限状況で繰り広げられた人間の営みの記録は、人間洞察のヒントの宝庫ともいえるからだ(なお、余談ではあるが、私自身のアイドル的存在は、曹操の軍師である荀彧〈じゅんいく〉である)。

 特に、「大人物はどうあるべきか」「将の将たるものはどうあるべきか」というのは鉄板ネタで、古今の偉人が異なる語り口でそのあり方を述べているが、おおざっぱに言うと、中国古典の大人物に必要な条件としてはだいたい以下のようなことが語られている。

 1.使命感(天命)
 2.知識、見識、胆識
 3.長期的視野と時流の見極め
 4.得意淡然 失意泰然
 5.包容力