東京・上野の森美術館で「キングダム展-信-」開催中(7/25まで)東京・上野の森美術館で「キングダム展-信-」開催中(7/25まで)(c)原泰久/集英社

「週刊ヤングジャンプ」での連載開始から15年、圧倒的な人気を誇る歴史漫画『キングダム』。テレビアニメ化、実写映画化され、最新61巻までの累計発行部数は、8000万部(電子版を含む)を突破している。6月12日から「上野の森美術館」で開催される『キングダム展-信-』を前に、作者である原泰久氏にインタビューすると、大学時代、大学院時代に身に付けた理系的思考が『キングダム』制作につながっていると明かしてくれた。

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 中国の春秋戦国時代を舞台に描かれる壮大なストーリー、迫力の戦場シーン、個性的なキャラクター、仲間との絆。多様な魅力が評価を集める『キングダム』だが、原泰久氏は、作品の軸となる「プログラミング的な考え方」が、ほかの漫画にはない武器だと話す。

「プログラミング的な考え方」は、九州芸術工科大学(現・九州大学芸術工学部、以下芸工大)の大学院時代に培われた。

「映画監督になりたくて、芸工大に行ったんです。大学では芸術と工学の両方を学ぶので、デッサンやデザインから数学、情報解析など、幅広く講義を受けました。ものづくりが好きだったので、芸術系の講義は楽しいのですが、工学系は単位をとるために仕方なく勉強するという感じでした」

 めざしているのは映画監督。大学3年の終わりに入る研究室(ゼミ)は、当然映像系の研究室と決めていた。しかし望んだ研究室は人気が高く、映画研究会の学生ですぐに埋まり、そのほかの芸術系の研究室も早くに定員が埋まってしまった。

「映像を学ぶために芸工大に行ったので、希望の研究室に入れなかったのはすごくショックでした。結局入れたのが、画像解析の研究室。そこで図らずも、プログラミングを学ぶことになったのです」