キングダムで描かれる秦の始皇帝と共に埋葬されている兵馬俑秦の始皇帝の墓に埋葬されている兵馬俑。『キングダム』は秦の始皇帝になる政と大将軍の信の活躍を中心を描いた物語だ Photo:PIXTA

【おとなの漫画評 Vol.5】            
『キングダム』原泰久
既刊51巻 2018年9月現在 集英社

「週刊ヤングジャンプ」(集英社)で連載中の中国古代史から題材を得た長編漫画である。連載開始は2006年だから12年、単行本は現在51巻、週刊誌の連載なので3ヵ月に1冊のペースで単行本が出版されている。

 時代は春秋戦国時代(BC770年~BC221年)の終盤、中国を統一した秦の始皇帝誕生前の物語だ。周王朝の滅亡後、550年以上も戦乱が続いているが、200を数えた国々は500年を経て7国(斉、秦、楚、魏、韓、趙、燕)に集約され、合従連衡を繰り返して「敵の敵は味方」の複雑な武力衝突と外交戦争が続いていた。

秦の大将軍となる「信」を
主人公にした珍しい漫画

 主人公はのちの始皇帝になる秦の王子政(せい)と大将軍になる信(しん)。中国古代史をテーマにした小説や漫画は非常に多いが、政はともかく、信を主人公にした作品は初めてであろう。
 
 作者の原泰久は、実在した将軍だがほとんど史料のない信を中心にして、とても面白い周囲の登場人物をつくっている。

 信は最下層の貧しい少年だったが、将来の将軍を夢見て剣技を鍛えていたという設定だ。偶然、少年の政に出会い、中国統一を目指して戦乱の中に飛び込んでいく。貧しい少年の出世物語でもあり、日本でいえば太閤記のような趣もある。少年の信が少年の政と出会った時期、秦の王子である政の状況はどうだったのか、ここをおさえておかないと大長編がわかりにくい。少し解説しておこう。

 政は、父親の子楚(しそ)が趙の人質として秦から送り込まれていたので趙で生まれている。子楚は秦の王族の中ではその他大勢の一人であり、立場は悪かった。ところが韓の大商人だった呂不韋(りょふい)が子楚に接近し、政商として密着する。