スポンサーの日系企業が
ニュージーランドから事業撤退

「もともと、この『日本語子ども図書館』は、ニュージーランドに進出した中古車販売を手掛ける日系企業がJKETの理念に賛同し、自社の敷地内の建物を提供してくれたものなのです。しかし、コロナの影響で販売が落ち込んだだけでなく、商品となる日本からの中古車も、輸入検閲など制限が厳しくなったようです。そのような状況から日本本社の判断で、6月末までの事業撤退が決まったとお伺いしました。閉館は大変残念ですが、これまでお世話になっていた立場ですので、何も言えません」と、その日系企業の判断に理解を示す宮内さんだったが、突然の退去要請で図書館内にある1万冊以上の本の行き場所に頭を悩ませていた。

 コロナはニュージーランドだけでなく、日系企業の撤退や駐在員の帰国で海外の日本人コミュニティーを一変させた。

 一般社団法人日本在外企業協会が2021年2月に発表した、社員の海外赴任を行っている企業へのアンケート調査『新型コロナウイルス感染拡大による海外駐在員への影響』では、「新型コロナ感染拡大の影響により一時的に日本に退避した海外駐在員はいるか」という質問に88%が「いる」と回答。「一時帰国中に海外赴任を終了し、本帰国になった海外駐在員はいるか」という質問には67%が「いる」とし、海外赴任の日本人数が急激に減少したことが分かる。

 永続的ではないとしても、日系企業の撤退や駐在員の大量帰国は、ニュージーランドのJKETだけでなく現地の日本人コミュニティーを軸に活動している世界中の非営利団体の資金枯渇につながってしまうことは容易に想像できる。